ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ一人遊びの日々

音楽の地産地消

 

前回の記事で、日本国内にある自分のおカネは日本に納税しているビジネスに使うことが重要だみたいなことを書いたが、これは、日本に骨を埋める覚悟を持って日々を生きる人にとって、死活的に重大なことだ。  

 

国が富むためには、国のおカネの収支がプラスであり続けることが必要だ。 そのためには、国の外に支払うおカネを最少化して、国の外から国内に支払われるおカネを最大化することだ。 国からどんどんおカネが流出することは、国が貧しくなることだ。 国が貧しくなれば、どこかの国の植民地にされてしまう。 宗主国にとって、植民地の人間は、未開の「土人」つまり宗主国の人間から見ればサルだ。

 

日本は、文化コンテンツにおいては、国の外に支払うばかりだったのではないか。 一方で、演歌や歌謡曲やニューミュージックやJポップ、そして、漫画は、日本人の日本人による日本人のためのコンテンツで、作る方も支払う方も日本国内に根を張っていて、日本国内でおカネが環流していた。 

 

旅行業もそうだ。 かつての日本の観光旅行は、日本人による日本人のための観光旅行だった。

だれもが、日本のシニア層が持っているカネを狙っている。 でも、日本のシニア層は、意識的なのか無意識的なのかわからないが、日本のエンタメやレジャーに集中的におカネを投下しているようだ。 昭和のスターたちによるコンサートは盛況のようだし、そのもようを放送するテレビ番組のスポンサーのジャパネットたかたの番組中のCMで宣伝する楽曲内蔵カラオケマイクを還暦近い私も思わず注文しそうになったし(私が70歳だったら絶対に注文した)、日本のシニア層の国内旅行は活発のようだ。 

つまり、日本のシニア層は、国や日本企業からもらった年金を、日本国内で消費することが多い。 

ようやく私は、これは日本のシニア層が自分の子孫が住むであろう日本の将来におカネを寄贈しているんだ、ということを悟った。 

コロナ後の国内観光業を大きく支えているのが、日本のシニア層だろう。 日本のシニア層は、北海道から沖縄~石垣島与那国島周辺まで日本の隅々まで観光旅行をすることによって、彼らが余分に使えるおカネを日本国内の観光地で消費して現地産業の売上と地方自治体の税収に貢献することによって、自分たちの子孫の国である日本の国土保全と繁栄に積極的に投資しているのだ。 極めて理にかなった行動だ。  

 

だから、日本各地に根を張って活動して、現地の自治体や国に租税公課を納めている、地元密着系ミュージシャンや芸術家に、おカネを払うことは、大いに意味があると、私は思った。 彼らが、日本各地に骨を埋める覚悟で根を張って、そこで生きていけることが、日本の国土保全と繁栄の礎だからだ。 日本の農産物や海産物を積極的に買って、日本の国土に根を張っている農家や漁業者に貢献することが、日本の国土の保全になる。 それと一緒だ。 日本各地で活動する全うなミュージシャンや芸術家たちの作品は、まずは地元の自治体が積極的に買い上げているだろうが、自分が気に入れば音源やオンラインライブチケットを買うなどしようと思った。  

 

何年か前に、私は、クラシック音楽のハーモニーを、英語圏の先生にリモートで習おうかなと思ったことがあった。 それまで一時期日本の音大作曲科を卒業した日本人の作曲家のもとに和声学を習いに行ったことがあったけど、「クラシック音楽の本場西洋に住む西洋人の作曲家から習うのがよいだろう」と思ったのだ。 だが、今はもう、国外の誰かに私の日本円を流出させる気持ちは無い。 というのは、「プレイバック日本歌手協会歌謡祭」などの歌謡番組を見て、日本の和声学は「日本人の日本人による日本人のための和声学」として確立したのではないか?と思ったからだ。 だったら、それらの演歌や歌謡曲や日本のテレビ最盛期を彩った劇伴音楽の礎となった「日本人による味噌汁臭い西洋クラシック和声学」を知っていることのほうが、日本人として遥かに価値があると思ったのだ。 日本のスーパーで売られているベーコンは、本家のベーコンとは似ても似つかぬ代物だ。 音楽も然りだ。 本場の西洋クラシック音楽は、本場の西洋人に任せておけばいい。 日本の伝統音楽は当然のこと、ポップスやジャズやインストにおいても、日本人が創り出す、あったかい味噌汁やえもいえぬぬか漬けの香りのする音楽を極めるのが王道だ。 というか、みなさん自然にそういう音楽を創っているから、日本の市場で見世を張り続けていられるのだ。 どんなにオシャレで洗練されていても、どこか懐かしいような、ほっとするような音楽。 日本人の音楽だ。   

 

「欧米に音楽留学経験あり」の日本人音楽家の活動拠点は日本だから、日本の文化に融合して活動するのが唯一の道だ。 それがいやなら、どこか他の国で活動すればいいだけのことだ。 「欧米在住」の日本人音楽家の活動拠点は欧米だから、彼らは欧米人に彼らのバリューを売って生計を立てているはずで、別に「欧米在住」の威を借る狐みたいになり下がって郷里の日本人相手におカネをせびるサモシイことはしないだろう。 日本の音楽業界の頂点におられる超一流のプロの音楽家が、「海外在住」を謳って日本からカネを巻き上げようとする存在について苦言を呈していたが、まったくもってそのとおりだ。 「海外在住なら海外でカネを稼げよ、なんで日本の方ばかり向いてんの?」ということだ。 日本の超一流人は、ちゃんとわかっていらっしゃる。 

「逆出稼ぎ」のムクドリよろしく日本に「凱旋帰国」する「海外在住の音楽家」たちの稼ぎのほとんどが「凱旋帰国」という名の日本国内巡業だとしたら、それはどうか?と思う。 「凱旋」とは「戦いに勝って帰ること」だって。 桃太郎は、村に狼藉をはたらいた鬼が住む鬼が島から、宝物をたくさん持ち帰ったよ。 海外で「成功して」帰国するんだったら、故郷にカネを無心に来るんじゃなくてさ、海外で築いた富(とみ)や知識を故郷に持ち帰ってみんなとシェアしたり、海外から故郷にカネが流れる仕組みを持ち帰って来たりと、故郷の繁栄のために貢献しなきゃ、「凱旋」とは言えないでしょ。 3.11の直後に、夫婦の夫の国であるヨーロッパのある国に家族総出で引っ越した(=日本脱出した)国際結婚の家族を知っているが、日本がいちばん大変な時期に日本を棄てた者に帰る場所は日本には無い、と覚悟を決めて日本を脱出したことだろう。 3.11直後に日本を脱出して、しばらくしてから「もう大丈夫そうだから」とまた日本に戻って帰任した外国人が多い日本の職場では、日本にとどまった[日本人+外国人たち]と[彼ら脱出帰国組]との間で、人間関係がギクシャクしてしまったため、両陣営のわだかまりを解くための社内研修を開催した外資系企業もあったと、当時のFTかなんかにかいてあった。 当たり前だ。 その国がいちばん大変な時にその国を棄ててトンズラしたとおもったら「もう安全らしいんで帰ってきました(ヘラヘラ笑)」なヤカラを、いったい誰が信用できるもんか! そんなことは、世界中、どこでもおなじだ。 国籍を選ぶという行為は、だからこそ重大であり、だからこそ、その国におけるその人の信用に大きくかかわる行為なのだ。   

 

私は、私が生まれ育って骨を埋める覚悟でいる日本の将来のために、日本に骨を埋める覚悟で住んで日本に納税している音楽家(=事業者)に私のおカネを使う。

 

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