ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ一人遊びの日々

クラシック音楽はメタルか?

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★2021年4月に追記: 私が下記の記事をアップしたちょうど2年後に、NHKがこのテーマで番組を放送したんですね(きっと、私の記事も参考にしたことでしょう): 『ららら♪クラシック「メタル loves クラシック!?」』 NHK Eテレ 2021年1月15日(金) 午後9:00〜午後9:30(30分)

 

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以前、こんな記事を書きました:

 

それ以降も、「クラシック音楽のメインストリームは、20世紀の間にメタルへと変貌を遂げたのではないか?」を裏付けるような情報を、ちらほら目にしてきたので、ここらへんでいったんまとめます:

 

 

①いまから10年前に、すでに、「クラシック音楽ファンとメタルファンは、性格的に同じ特徴を持っている」という研究結果が、話題になっていた:

Take note: Why fans of heavy metal and classical music have a lot in common | Daily Mail Online

これは、クラシック音楽も、メタルも、出処(でどころ)は一緒、同じエスニックグループから生まれたことを考えれば、当然といえます。 クラシック音楽のハーモニーの教科書といえば、バッハ、モーツァルト、ベートーベンですが、 三人とも、ドイツまたはドイツ語圏の出身です。 かたや、メタルも、ドイツや北欧などのヨーロッパ北部が主流です。 イタリアにもメタルはあるんだと思いますが、あまりメタルっぽいイメージないね。

 

 

②ヴァーチュオシティ(virtuosity)を速弾きに求める:

クラシック音楽の美技(virtuosity)といえば、16分音符などを高速で速弾きするイメージがあります。 ヴィヴァルディの「四季」のヴァイオリンのソロも、ベートーベンのピアノソナタも、単純なリズムパターンの中で等間隔の音符をやたらめったら速弾きしています。 バッハのブランデンブルグ協奏曲のなかに、チェンバロのメタルレベルの速弾きがあったと思う。 そう、メタルでは、ギターのソロのいちばんの見せ場といえば超速弾きです。 wikiによると、メタルのギター速弾きコンテストでは、「熊んバチは飛ぶ」を速弾きして競うそうです(だからみんな練習してるんだね ↓ )。

Rimsky-Korsakov - Flight Of The Bumblebee 250 Bpm [Metal Version] - YouTube

FLIGHT OF THE BUMBLEBEE METAL - Nikolai Rimsky-Korsakov - YouTube

Flight of the Bumblebee - Rimski Korsakov (Metal Version) - YouTube

ちなみに、「単純なリズムパターン内の等間隔の細かい音符の速弾き」は、北方民族に共通するリズム感(というか、ある意味リズム感の無さ)に起因しているような気がします。 たとえば、津軽じょんがら節に代表される津軽三味線も、速弾きが最大の見せ場になっています。 そう、日本にも、日本固有のメタルがあったんだね!

 

 

 ③長髪のヘアスタイルを好む:

シラミやハゲ対策にカツラを使用していたのかは知りませんが、ビバルディ、ヘンデル、バッハなど、バロック~古典のころは、みんなカーリーな長髪です。 かたやメタルの人たちは、基本的に長髪で、だいたいカーリーです(ていうかカーリーの人が目立つんだね、たぶん)。 長髪は特に、ギタリストに顕著な特徴です(が頭のてっぺんが寂しくなってくると短髪にする傾向があるようです)。 

 

 

④服装に共通点がある場合がある:

 イングヴェイ・マルムスティーンが、日本のオーケストラとシンフォニックなメタルを演奏した動画を見ました。 ③にあるように、カーリーな長髪に、ビバルディみたいな服を着て、超絶技巧なギターを弾いていました。 (でもマルムスティーンは、タクソノミカル(分類学的)には、新古典派メタルで、交響メタルじゃないんだね、この記事の下の方にリンクした動画によると。)

 

 

⑤ハーモニックマイナースケールやディミニッシュコードなど、半音3個分のインターバルをフィーチャーして、激しくシリアスなサウンドを構築する:

これは、冒頭リンク先の記事「ベートーベンはメタルか?」に書いたとおり、なんだかやけにシリアス感あふれるハーモニーが好きっぽい。 減5やbb7といった半音3個分を重ねたインターバルの多用によって、厳粛で荘厳かつ激しく劇的なスペクタクル サウンドを追求する傾向が非常に顕著である。 これらにAugも加えた、一連の「超シリアス インターバル」は、新約聖書の最終章「ヨハネの黙示録」に描かれる、すべてのあらゆる悪い事が人類に降りかかる、この世の終わりの阿鼻叫喚の地獄絵図から、宇宙創造主による劇的な救済(信者だけを)という、終末思想的&黙示的なサウンドにもつながる。 メタルでは、重いディストーションをかけたギターと、バスドラによって、悪魔的で黙示的な終末思想観に、重厚感のある荘厳さが加わって、聴く人に畏怖の念を起こさせる。 これは、クラシック音楽における、フルオーケストラ、パイプオルガン、ベートーベンのピアノ曲の低音コード弾きを連想させる:

 

⑥強烈な宗教感、あるいは反宗教感:

キリスト教の神やキリストや天国(クラシック音楽)、または悪魔や死や地獄(メタル)を表現する。 また、ヨハネの黙示録に描かれた終末思想も表現される(ヘンデルメサイアの「ハレルヤ」の歌詞にヨハネの黙示録の引用が使われている。メタルの具体的な曲は知らないけど、終末思想を表現する曲が多いと、どこかで読んだ)。

あるいは、神の存在を信じない唯物論や、キリスト教伝来前のヨーロッパの土着宗教など、キリスト教に対抗する二元論的な世界観を表現するバンドもあるようだ。

クラシック音楽のハーモニーのお手本となっているバッハは、ルター派の教会の音楽監督だったと思います。つまり、キリスト教でも、プロテスタントの影響を受けています。ヨーロッパでは、フランスやイタリアやスペインはカトリックですが、ドイツや北欧はプロテスタントが多い。 バッハ&モーツァルト&ベートーベンはドイツ語圏出身、メタルもドイツ~北欧がメインだとすると、クラシックの主流派もメタル主流派も、プロテスタント地域といえます。 カトリックは、仏教でいえば大乗仏教プロテスタント小乗仏教に相当するかと思うので、より戒律の厳しい宗派の宗教圏が本拠地といえます(だから、訓練によるストイックな速弾き芸を礼賛するサイキがあるのかもしれません)。

 (横道にそれますが: ヨーロッパの土着宗教(paganism)は、日本でいえば神道の源流になった(神社のお社(やしろ)の下や中に鎮め封じられた)自然崇拝的な宗教、つまり、人間の死生観の根本となっている、最もおおらかで純粋な宗教だ。 ヨーロッパに伝来したキリスト教は、ストーンサークルの真ん中など、地元の土着宗教の聖地の気を封じるようなポイントに教会を建てた。 だから、土着の神様たちは、醜悪な妖精に格下げされてしまっている。 「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞をとった理由は、「この世と、この世のものではない者たちの世界は、互いにつながっていて自由に行き来できる」というpaganismの世界観が、誰に臆することなく堂々と表現されていること、そして、彼らはこの世で、石に姿を変えて、いまだに私たちのすぐ隣に存在し続けているという、あのエンディングの映像が、ヨーロッパ人の心の奥底に今もひっそりと息づいているpaganismを強烈に揺さぶったからだと、私は考えています。 実際に、キリスト教の「クリスマス」も「諸聖人の祝日(⇒ハロウィン)」も、paganismの風習に乗っかったものです。 フォークメタルを聞くと、そんなことに思いをはせます。)

 

 

⑦メタルのギタリストがよくクラシックの名曲をカバーしている:

動画でわんさかでてくる。メタルのフォーマットでも違和感なく名曲。上記の「ベートーベンはメタルか?」を参照。

 

 

⑧そういう動画についたコメント:

「クラシックは電気がなかったころのメタルだ」、「メタルの祖はベートーベンだ」「いやその前にビバルディがいる」、「音大の時に、クラシックの歴史の授業を聞いた後、教授に、『ということは、クラシックはメタルってことですか?』と質問したら『まあそういうことだね』と言われた」 といったコメントが鈴なりに連なっている。

 

 

⑨そしてこんな動画が山ほどでてくる:

10 Awesome Pieces of Classical Music For Metalheads - YouTube

The most Metal sounding Classical pieces. - YouTube

そして、さらなるコメントが鈴なりに連なっている:

「(パイプオルガンの演奏のシーンへの感想:) 教会の女性オルガニストが、メタルコミュニティ全体の98%の人たちよりもメタルになっている瞬間だ(←注:たぶん、メタル野郎人口の統計をとった場合、その正規分布を表すベルカーブの2標準偏差よりも上に外れている。つまり全体の上位2%、もしメタルコミュニティに高IQコミュニティのような「メタルMENSAの会」があったなら、入会が確実な、ケタハズレなメタル野郎だ、ということを言っているのかな?)」   「(作曲家某のこの曲のこの部分は)まさにメタルのリフそのものだ」  「クラシック音楽は、ディストーションと電気がなかったころのメタルだ」  「ロックの歴史の授業で、いかにクラシックがメタルに似ているかを習った」  「ワーグナー、バッハ、ベートーベン。最も偉大なクラシックのメタル野郎たちだ。」 「バッハはわからないが、ワーグナーとべートーベンは間違いなくそうだ。これに加えて、ショスタコーヴィチショパンラフマニノフムソルグスキー、ストラビンスキー。」 「ベートーベンがメタル野郎なことはみんな知っている」 「リストもそうだが、彼はピアノ曲がほとんどだ。ホルン+打楽器のshitは入ってない。ピアノだけだがメチャクチャ速弾きだ (←注:「shit(クソ)」って書いてるけど、ホルン+打楽器の響きに至高のメタル感を感じているんだね」 ふと思ったが、ホルン+打楽器は、電気がない時代のディストーション&バスドラの役割を担っていたのかも。)」  。。。

だが、これらの選曲について不満もあるようだ:

ストラヴィンスキーの「ザ・ライト・オヴ・スプリング」とヴェルディの「レクイエム」が入っていないぞ」  「同感。とくに、ストラヴィンスキーは、ヘヴィメタルの偉大なる父といわれている」  「そのとおりだ、「ザ・ライト・オヴ・スプリング」を選曲にいれるべきだ」 「選曲が、シンフォニック(交響楽つまりオケ)にかたよりすぎている。メタルといえば、ベートーベンの「ムーンライト・ソナタ 3rd ムーヴメント」だろう!」 「第二弾を作るときは、ムソルグスキーの「ナイト・オン・ボールド・マウンテン」を入れてくれ」

 

でも、メタルも複雑化して、タクソノミーがもう全然わからない。そんなときは是非、こんな動画で勉強したい(このひとイタリア人みたいだ):

15 STYLES OF METAL (w/ guests) - YouTube

( ↑ 個人的には、ゴシックメタルが好みでした。パワーメタルもいい。やっぱ私はポップス好きなんだね。) 

 

メタルはすでに無調の領域に突入している。

そして、現代音楽のデンジャラスでオーサムなメタルカバーがでてきている:

John Cage - 4' 33'' Death Metal Cover by Dead Territory - YouTube

Death Metal Cover - John Cage 4'33 - YouTube

 

たしか、アダム・ニーリーさんが、「1990年代にメタルの論文が書かれている」と、どれかの動画で言っていたと思う。 すでに学術的な研究対象になったメタルは20世紀のクラシック音楽なのか?

 

2020年1月に追記:

やはり、クラシック音楽の真の後継者はメタルなのではないか。と、思うようになっています。 というのは、日本人が思いもよらない、表立っては決して語られない事情が、19世紀後半以降のクラシック音楽にあるのではないか、と感じるようになったからです。 この時期を通して、クラシック音楽を作曲&演奏する担い手に、ヨーロッパ系ではない(しアジア系でもアフリカ系でもない)人たちが増えた事情があるのではないか、それを、先の大戦もあって、歴史的に、ヨーロッパ大陸のヨーロッパ系の人が忖度(そんたく)して、表立って指摘することができない事情があるのではないか。 そういった、ヨーロッパ大陸の民族や北米の移民の歴史や文化のいろいろな事情は、実際にその土地に何年も住んでその土地の言葉をかなり自在に操れて情報や空気感や人々の顔の特徴の違いを感じ取れるようにならない限りは、日本人のような部外者が理解することは不可能だと思います。 メタルは、キリスト教の影響を色濃く受けており、paganismと呼ばれるヨーロッパの原始宗教の匂いも感じられるため、ヨーロッパに住むヨーロッパ系の人たちが担い手だと思われます。 その意味で、クラシック音楽の現代における真の後継者は、メタルなのではないか。 部外者である私はその辺の機微が良くわからなくて、想像するだけですが、そんな思いを巡らせています。 ジャズやアメリカの現代音楽は、アメリカでますます複雑性を増して高度化を続ける、アメリカならではの素晴らしい音楽で、私は大好きです。

 

2020年7月に追記: フルオーケストラ演奏という楽器編成からみれば、ハリウッド映画音楽が、それまでのオペラやバレエの劇伴音楽の後継者でしょう。 オーケストラ編成の曲で20世紀後半の代表曲として歴史に名を残す作品をひとつだけ選ぶとしたら、音楽の素晴らしさに加えて映画の経済効果の規模からいっても、間違いなく、ジョン・ウィリアムズ作曲の「スター・ウォーズ」(1977年公開の作品)の音楽でしょう。(とはいっても、ハリウッドの文化は大陸ヨーロッパの土着文化由来ではないでしょうから、文化的・民族的な観点からいえばやはり、クラシック音楽の真の後継者はメタルなんだと思います。)

ところで、「スター・ウォーズ」(1977年)は、当時から今に続く、アメリカの国の在り方を象徴する映画だと思います。 アメリカの忠実な同盟国を象徴するC-3PO(イギリス)とR2-D2(日本)*(いずれも人間のご主人様に仕えるロボット)や、アメリカ社会の民族的な構成(主役の男性(人間)たちと、女性(二級扱いの人間)と猿人)が、たいへんに興味深いことです。 そりゃぁ、次の作品からメインキャストにアフリカ系の人間役を追加したはずですよ、まったく、ひどいもんです。 そういった国の在り様(よう)だから、疫病が流行ったりすると、鬱屈したものが噴き出して暴動が起きるんだと思います。  

*C-3PO(イギリス)は、大英帝国のキンピカ時代を今となっては悲しく象徴するような、安っぽい金色の丸裸の(もはや全てを失って今は何にも持っていない)姿で、行儀作法(だけ)に秀でていて、育ちの良いイギリス英語を話す(イギリス人の俳優が演じている)。 R2-D2(日本)に至っては、小型で(背が低い)、しかも、ピーキューピーキューしか言わない(英語を話さない)、そして、Xファイターでは(あたかもご主人様(ルーク=アメリカ)の盾のように)過酷な機外に据えられて、戦闘中に敵機の銃撃を受けて戦死。 R2-D2の戦死は、カミカゼを表していると思いますよ。 というのは、アメリカ映画では日本人は空中戦で戦死することになっている、と思うからです。 千葉真一氏が出演したアメリカ映画(たぶん「エイセス/大空の誓い」だと思う)でも、悪者たちをやっつける最後の空中決戦で、ゼロ戦に乗った千葉氏扮する日本人パイロットが敵機の銃撃を受けて瀕死の負傷の後、 覚悟を決めてそのまま敵の親玉めがけてゼロ戦ごと体当たり&自爆で刺し違え爆死、というストーリーだった。 R2-D2はロボットだから、修理されて生き返ったけれど、私にはどうしても、R2-D2アメリカから見た日本と日本人に見えてしまうのです。

(ちなみに、「スタートレック」や「FUTURAMA」といった、アメリカのSFドラマやアニメも、制作された当時のアメリカ社会を表しているようです。 アメリカにとっての日本のプレゼンスも垣間見えるようで、大変に興味深いことです。 「FUTURAMA」については、「AD3000年のニューヨークを舞台にして、現在(AD2000年ごろ)のアメリカ社会を描写している」という内容のことを、原作者(「ザ・シンプソンズ」を作った人)が語っているの映像を当時テレビで見ました。「FUTURAMA」の主人公フライや、リーラ、ベンダー、ゾイドバーグに、アメリカ人は、どの人種のアメリカ人を重ね合わせて見たのでしょうか? また、コロナ後の2020年の夏に「FUTURAMA」の再放送を見る人たちは、一体どういう思いでエイミーを見るのでしょうか?)

 

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