おんがくの彼岸(ひがん)

「出すぎた杭」の大人ピアノならではの自由と醍醐味(だいごみ)を楽しむtokyotoadのブログ

ツーリズムにブラボー4回

 

何年か前に、アメリカ人の女性TVプロデューサーが書いたエッセイ本を、アメリカにいたときにAudibleで聞きました(たぶんユダヤアメリカ人で、子どもの頃に公園で変質者に攻撃されたときの傷跡が口元に残っている人。名前は忘れました)。

 

その人の本でただひとつ覚えているのは、うろ覚えですが、その人と彼氏がカリブ海にクルーズ旅行に行った際に、その船が事故にあったくだりです。 何かに衝突したあとに、火災がおきたみたいな事故だったと思います。 事故直後に、船内のスピーカーから、「Bravo!」という声が聞こえたそうです。 「乗客の皆様、落ち着いて下さい、船は大丈夫です」というアナウンスが流れるが、またしばらくして「Bravo!」という声が。 そして、船内の搭乗客に「大丈夫、落ち着くように」とアナウンスが続くが、またしばらくして「Bravo!」。 この本の著者である彼女は、船の中で「Bravo!」を3回聞いたそうで、その後、どこかの港に到着して下船した。

 

バケーションが終わって、テレビの職場に戻って、一緒に仕事をするエンターテイナーにこの話をしたところ、「それは間一髪でしたね、自分はクルーズ船内で上演するショーの出演者の仕事をしたときに、事前にクルーズ会社から、「「Bravo!」というアナウンスが4回聞こえたら、船が沈むことを意味するから、その際はすみやかに搭乗客を救命ボートに乗せる任務につくように」と指示されたんですよ。」 「Bravo!」は、クルーズ船の従業員に向けて「船がヤバイぞ」と伝える、符牒(ふちょう)だった。「Bravo!」の数が増えるほど船の状態はますます危険になり、4回目の「Bravo!」は「この船は沈むぞ!」という意味だった。 「私を救命ボートに乗せる、つまり、私が命を預ける相手がエンターテイナーだったとは!」と、彼女は2度とクルーズ船には乗るまい、と心に誓ったのだった。

 

というくだりを覚えているのですが、その後日本に帰ってきてしばらくすると、リタイアした熟年夫婦向けにクルーズ旅行を売りこむCMやテレビ番組がどんどんでてきた。 それらを目にするにつけ、私は、ゴダイゴが豪華クルーズ船でコンサートを行ったことを知っていたので、「もし私がクルーズ船に乗っていてBravo!が4回聞こえて、避難する私を救命ボートに乗せてくれるその人をふと見たらミッキー吉野だった!ということがあったら....」と、一体それはとても有難いことなのか、それとも、最悪のことなのか、と思いを巡らしたものです。

 

昨今、パリ、ローマ、バルセロナ、京都、浅草など、観光客があっという間に消滅した世界の観光都市に住む人たちは、地元の住民だけになった町に、どこかホッとしているかもしれません。 私も、週末になると増える街中のポイ捨てごみが目に見えて減って、道がきれいになって、どこかホッとしています。 地元の住民の住環境と生活にしわ寄せしてインバウンドで稼いできた観光業が、今その有り余る宿泊施設と労働力によって恩返しをする時が来ました。

 

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