ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ一人遊びの日々

大人になってからの音感は絶望的か?

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「大人になってから音感を獲得することは絶望的か?」

 

みたいなことを検索している人がいらっしゃるようです。

 

私の個人的な経験では:

 

① 人は、相対音感を持って生まれてくるようである:

 中学時代、ギターにカポをつけて平気で演奏するクラスメートたちがいた。 

 

② 子どもの頃にピアノを習うと、ピアノレッスンで習う曲がカバーする音に限っての絶対音感ができるが、それと引き換えに、ピアノの訓練によって、持って生まれてきた相対音感が失われる:

 ギターにカポをつけて平気で演奏するクラスメートたちを見て、私は混乱した。 小さい頃からピアノを習っていたので、私には絶対音感はあったが、中学に入るまでに相対音感が完全に失われていたのだ。 

 

③ ピアノを習っていても、レッスンで習う曲に限った絶対音感しか育たない:

 中学時代の私の絶対音感は、ジャズやポップスなどの20世紀の音楽については全くの役立たずだった。 ユーミンの曲のカッコいいコードが耳コピできなかったし、坂本龍一の曲はエグイ場所が全く聴きとれなかったし、カシオペアなどのフュージョンに至ってはただ呆然と聞いているしかなかった。 この経験から、クラシックピアノだけ習った人が自慢する絶対音感は、クラシック音楽限定の絶対音感だ、ということを、私は身をもって知っている(これは、野球で内野守備しかいないのと一緒。広い外野にボールが飛ぶとお手上げ)。 さらに、生徒を多数音大に送り込むピアノの先生や、ショパンの難曲を弾きこなすピアノ愛好家が、ポップスに使われるコードを聴きとれない場面に遭遇した経験がある。

 

④ 絶対音感がある人でも、中年以降にズレ始める人がいる:

 私の場合、半世紀生きてきて音楽を再開したら、半音~全音下にズレていた。 数年前のピアノ会で、同じことを言う人がいた。

 

⑤「絶対音感は50歳前後からズレはじめ、60歳ごろに完全に失われる」という説があ

る:

 Rick Beato氏の動画で知った。

 

⑥ 絶対音感がズレた50歳以降からでも、音楽が好きでいろいろやっていると、絶対音感の獲得と引き換えに失った相対音感が育ってくる:

 半世紀生きて音楽を再開したときに、「生きている間に、教授の曲のエグイ箇所や、ユーミンや、大貫妙子女史の(特に初期の)曲や、ジャズやフュージョン耳コピできるようになりたい」と夢見ながらいろいろ楽しんでやっていたら、耳コピできるようになってきた! 12キーで弾くのもずいぶんと楽になった。 ただし、「音感ドリル」みたいなのはやっていない。「勉強」や「訓練」のマインドセットでは、どうやら育たないようだ。

 

⑦ ジャズや、ヴォーカル伴奏の仕事をするなら、相対音感が死活的に必要:

 クラシックピアノしかやってこなかった人がプロになろうとすると、ここでつまづく。

 

⑧ 過去の大作曲家やジャズの神様、そして、現在第一線で活躍している超一流のミュージシャンには、相対音感だけの人が数多く存在する:

 これもRick Beato氏の動画や、その他の動画で知った。

 

⑨ 超一流のミュージシャンになると、曲のキーを間違えて弾き始めても、そのまま平気で演奏できる:

 そういう場面をライブで観た! もしもソロライブだったら、本人も気がつかずに、いや、気がついたとしても平気で最後まで演奏しただろう。 キーを半音間違えてイントロを弾き始めたのがわかったのは、共演者がいたからだ。 共演者が楽譜を見ながら自分の楽器のパートの最初の音を弾いたら、変な感じになって、そこで初めて、本人が、半音ズレたキーで弾き始めたことに気がついた! ところが、共演者も共演者で、次の音から、そのズレたキーに合わせにいった! そこで演奏をやめて、本来のキーで最初から弾き直しになったのだが、半音ズレたキーで弾き始めるなんていうミスができる人がいますか? 中途半端なプロにはとてもできない芸当です。 この、音楽センスが抜群で、いつも水を漏らさぬ完璧な演奏をするピアニストさんがキーを間違えたのは、自作の曲じゃなくて、ある有名な曲をアレンジしたものだったから、そして、自分が主催のライブでしかも気心の知れた共演者たちに馴染みのお客さんたちだったからと思いますが、スゴいですね。 この人は、演奏も超一流だが、作る曲のセンスが超一級品。 超一流のプロは、たとえミスをしても異次元レベルだ。

(ちなみに、ライブの主催者であるそのピアニストさんが半音ズレたキーでイントロを弾き始めた時に共演者さんもそれがわかったかどうかは、謎だ。 だが、共演者さんには、楽譜のキーのとおりの音を弾く以外の選択肢はなかった。 というのは、他にも共演者がいたからだ。 二人だったらどちらかが合わせればよいが、三人以上になると、意思疎通が難しい。 ここに、楽譜の重要性が存在する。 自分のライブに加えて他のアーティストのライブサポートやレコーディング仕事で忙しいプロの演奏家は、一年の間に演奏する楽曲数がシロートの発表会とは2ケタ*違うので、仕事で演奏する曲を一曲一曲覚えている暇はない。 インプロヴ系の演奏を除いて、楽譜は、複数の演奏者が合奏する際には絶対に必要だ。)  *売れっ子のプロになると、延べ演奏曲数(演奏回数ベース)でケタ違うと思う(2ケタどころではない)。

 

 

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