おんがくの彼岸(ひがん)

「出すぎた杭」の大人ピアノならではの自由と醍醐味(だいごみ)を楽しむtokyotoadのブログ

ピアノの湿度管理で大人ピアノ愛好者がたどる道

 

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の続き。

 

ピアノの湿度管理を気にし始めた人たちは、日本でも、アメリカやイギリスでも、だいたい似たような道をたどるようだ、と感じた:

 

 ① ピアノメーカー各社の推奨湿度の範囲を調べはじめる。ピアノ販売業者や調律師のサイトもひととおり見る。 

 

 ② とりあえず市販の安価な(1万円未満の)湿度計を1個買ってみる。

 

 ③ 自分の家の中の湿度の変化にビックリ!「これはヤバイ!」っとオロオロしだす。

 

 ④ 「相対湿度って何?」「室温20度で湿度50%ってどういうこと?」「どうして、ピアノメーカーによって推奨湿度の範囲が微妙に違うの?」とますますオロオロして、

 

 ⑤ いろいろな種類の湿度計を何個か買ってみて、その数値のバラツキを目の当たりにして、湿度計の数値があまりアテにならないことを、身をもって知る。

 

⑥ もはや、ピアノの世界の湿度管理の情報だけでは飽き足らなくなって、葉巻(シガー)愛好家や爬虫類愛好家などガチに湿度管理をしている人たちのサイトにたどり着いて、結局は、彼らの使っている湿度計もアテになりそうにないことを知る。 当然、ヴァイオリンなどの他の木製楽器の湿度管理のサイトも見に行って、家具木工のサイトにまでたどり着く。ピアノは木工楽器だから。 日本の場合は、葉巻愛好家の情報のほかに、湿度管理を求道する農家の方のサイトや、全館空調の家を購入した人のサイトを見て、舌を巻き恐れ入ったり、和楽器やギターの湿度管理まで調べ始める。

 

 ⑦ 「教えて知恵袋」的な質問サイトや、ピアノ好きが書きこむピアノフォーラムのスレッドを見に行って情報を漁りまくる。ピアノの湿度管理に関する動画も漁る。

 

 ⑧ そうこうするうちに、湿度計の数値はアテにならず、相対湿度のとらえ方が人によって(調律師によっても!)真逆の場合すらあることを知り、自分でもわけがわからなくなっていくうえに、自分の家の空調設備の種類や築年数や、ピアノを置いてある部屋の大きさや、自分が所有するピアノ自体といった、変動要素があまりにも多すぎて、ネットで集めた他人の成功例や失敗例は良くても参照程度にしかならないことを知り、ピアノの世界でなんとなくそこに落ち着いている「最大公約数の概念」をベースにして自分で試行錯誤をし始める。 

 

 ⑨ ガチな湿度管理の努力は「負け戦を戦う」に等しいことを感じて、なかば諦めの悟りの境地に至り、一方で、「喉が渇く」「目がシバシバする」「なんだか蒸してきた」などの自分の野生の勘に頼りながら、湿度計の数値を生暖かく見ながら、「自分の努力でできるのはだいたいこんな程度?っていうか、もうこれ以上の献身的努力はできない!」ぐらいの落としどころに、湿度管理のルーチンが落ち着いていく。調律時に音の狂いが少ないようなら、「自分の湿度管理はだいたい上手くいっているようだな」と考える。

 

 というところのようだ。

 

日本や米英に共通して、ピアノの湿度管理の「沼」にハマるのは、大人になってからピアノを購入した大人のピアノ愛好者が多い、という印象を持った。 子どもの頃に親に買い与えてもらったのではなく、大人になってから自分で働いて貯めたお金で、身銭を切って買ったピアノだからこそ、ピアノの維持管理に意識が向くのだろう。 

 

湿度管理に注意を向ける人たちが所有するピアノについては、ピアノのメーカーやブランドはあまり関係がないようだ。 「教えて知恵袋」的サイトやピアノフォーラムの書き込みから私が受けた印象では、日本の場合は外国製のピアノや日本メーカーの上位機種のグランドピアノの購入者が多いような気がする。 一方、アメリカでは、アップライト/グランドの別無く、ヤマハやカワイの普及モデルの中古をはじめ、スタインウェイの中古や各種メーカーの中古といった、中古ピアノの購入者が多いような印象を持った。 中古ピアノは安価な分、品質にバラツキがあるから、ピアノを購入する時点から、ピアノの状態や維持管理に意識を向ける所有者が多いのかもしれないのか? あるいは、アメリカでは国内に新品のピアノの流通量があまり多くなくて、中古のピアノのほうが手に入りやすいからなのか? 最近テレビで、「日本国内の新車が品薄になってきて中古車の販売価格が上がっている」というニュースをやっていた。 新品が手に入らなければ、需要が中古品に向かって中古品の市場が活況になる。 アメリカのピアノ市場は、かなり前からそうなっているのか? アメリカのピアノ愛好家がよくヤマハやカワイの中古ピアノを所有しているという印象を持ったが、それは、日本から中古のピアノがアメリカに輸出された頃があったからなのか?バブル崩壊まで、日本の経済の発展は、工業製品の海外輸出に加えて、戦後の日本に出現した「一億総中流」のボリューム消費ゾーンの内需を喚起して可処分所得を消費させることに負うところが大きかった。 バブルの頃までは、トヨタやホンダをはじめとする国産車は4年に1回新車を発売して、日本国民の多くが4年ごとに車を買い替えていたのだ。 日本国民が頻繁に新製品に買い替えることで国内の経済を回していた側面があったと思う。 日本人が丁寧に乗った、というか、日本人だから世界標準からみて何でも丁寧に使うのだが、そんな世界標準からみれば新品同様の中古車が、日本から海外へどんどん輸出されていった。 同じことがピアノにも起こっていたのではなかろうか? 日本の家庭から廃棄されたヤマハやカワイのピアノが海を渡ってアメリカに大量に入っていた時代があったのではなかろうか? 音大ピアノ科を卒業した人は、卒業するまでにピアノを何台も買い替えてもらう。 ピアノを何台も買い替えてもらうことは、ピアノメーカーの意向でもあったはずだ。 ピアノメーカーはピアノをどんどん売って利益を稼いで事業を継続していきたいからだ。 日本の小柄なお嬢さんたちがか細い指でどんなに鍵盤をぶったたいても弦が切れることは皆無で、アメリカ人の大男が弾くより遥かにピアノは痛まないから、痛みの少ない新品同様のヤマハやカワイの中古ピアノが日本からアメリカに大量に輸出されていた時代があったのではなかろうか? バブルの頃や90年代は、中国や東南アジアでは中古ピアノの需要はたいへん少なかっただろうから、アメリカに輸出される日本車を乗せたタンカーの空きスペースに、日本の小柄な子女たちが非力な指で鍵盤をなでるように弾き捨てた質の良い中古ピアノも同乗して太平洋を渡っていったのかもしれない、と想像してみたりする。 

 

アメリカでは、ダンプチェイサーやピアノライフセイバーといった、ピアノの内部から湿度管理をする製品に関する情報交換が目立つ。 家全体やピアノの有る部屋の湿度を管理するのが最も望ましく、それが難しい場合はダンプチェイサーを考えてみては?という考えを持つ人が多い、という印象を受けた。 大都市の中心部を除いて、土地が安く家が大きいアメリカは、ピアノを置く部屋も大きい場合が多いのだろう、それに加えて夏のエアコン冷房と冬の暖房で、部屋の湿度を管理することが難しい場合が多いような印象を持った。 全館冷暖房に設置する湿度維持装置が高額なこともあって、ピアノの内部から湿度を管理するしか方法が無い人たちがけっこういて、これらの製品が開発されたのだろう。

 

イギリスのピアノ販売業者が推奨する湿度は、一般に言われるよりも5%ほど高いようだ。 湿度の高いイギリスの気候を反映したもののようだ。 20年前にはイギリスで普及していなかったエアコン冷房が、現在どれだけ普及したかは知らないが、冷暖房の有る一般住宅の場合は、屋外の湿度の高さ低さはあまり関係ない。 問題なのは、ピアノの部屋の中の湿度がどうなっているか?であって、それは、日本でも、アメリカでも、世界中どこでも、同様だ。 ただし、冬場に気温がマイナス20度ぐらいになるカナダなどの寒冷地では、冬場の室内の湿度を低めにしないと窓が結露して窓枠がカビで痛むことがあるそうなので、ピアノに推奨される「最低でも湿度は40%以上」にするのは難しいらしい。 このような寒冷地のケースは、北海道などに当てはまる場合があるかもしれない。 逆に、アメリカ南部のテキサスかフロリダか忘れてしまったが、ピアノが蛾の食害を受けるケースがあるそうだ。 日本でも、山間部などの自然豊かな場所では、虫害を被ることもあるのではないだろうか?

 

英語のピアノのフォーラムを見ると、ヤマハやカワイの日本ブランドが北米で普及した背景がわかるような気がしてくる。 日本車とまったく同じで、日本のピアノには、幅広い環境で使用可能な、耐久性の高さが有るのだ。 日本車も、北は北極圏でも中東の砂漠でも熱帯地域でも、故障が少なくて信頼性が高い。 ヤマハやカワイのピアノもそうなのだ。 冷房や暖房が無い環境でも、冷房で室内の湿度が激変する環境でも、暖房で乾燥気味の室内でも、幅広い環境で、欧州ブランドよりも壊れにくく信頼性が高いのが、日本のピアノなのだ。 どんなに欧州ブランドがピアノ本家の音色を売りにしても、壊れてまともに鳴らなければ、何にもならない。 壊れないピアノは、ある意味最強なのだ。 世界各地に、ピアノを弾いて楽しみたい人たちがいる。 日本のピアノは、世界各地にピアノの音色を届け、世界各地のピアノ好きを幸せにしている。 とても素晴らしいことだ。  

 

私は、空調による過乾燥が原因とみられるアコースティックピアノ(アップライト)の響板割れとアクションパーツの損傷、そして電子ピアノの木製アクションパーツの損傷を経験したので、二度とこのような愚行を繰り返さないために、大変遅まきながら、大人のピアノの中核であるピアノ自体のメンテナンスを、発狂しない程度に探求していこうと思う。 

tokyotoad1.hatenablog.com

 

tokyotoad

 

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このブログ「おんがくの彼岸(ひがん)」は、私 tokyotoad が、中学卒業時に家の経済的な事情で諦めた(←諦めて命拾いした!と、今しみじみ振り返って背筋がゾッとしている)、「自分の思いのままに自由自在に音楽を表現する」という夢の追求を、35年ぶりに再開して、独学で試行錯誤をつづけて、なんとかそのスタート地点に立つまでの過程で考えたことや感じたことを記録したものです。

「おんがくの彼岸(ひがん)」というタイトルは、「人間が叡智を結集して追求したその果てに有る、どのジャンルにも属さないと同時に、あらゆるジャンルでもある、最も進化した究極の音楽が鳴っている場所」、という意味でつけました。 そして、最も進化した究極の音楽が鳴っているその場所には、無音静寂の中に自然界の音(ホワイトノイズ)だけが鳴っているのではないか?と感じます(ジョン・ケイジはそれを表現しようとしたのではなかろうか?)。 西洋クラシック音楽を含めた民族音楽から20世紀の音楽やノイズなどの実験音楽まで、地上のあらゆるジャンルの音楽を一度にすべて鳴らしたら、すべての音の波長が互いにオフセットされるのではないか? 人間が鳴らした音がすべてキャンセルされて無音静寂になったところに、波の音や風の音や虫や鳥や動物の鳴き声が混ざり合いキャンセルされた、花鳥風月のホワイトノイズだけが響いている。 そのとき、前頭葉の理論や方法論で塗り固められた音楽から解き放たれた人間は、自分の身の中のひとつひとつの細胞の原子の振動が起こす生命の波長に、静かに耳を傾けて、自分の存在の原点であり、自分にとって最も大切な音楽である、命の響きを、全身全霊で感じる。 そして、その衝動を感じるままに声をあげ、手を叩き、地面を踏み鳴らし、全身を楽器にして踊る。 そばに落ちていた木の棒を拾い上げて傍らの岩を叩き、ここに、新たな音楽の彼岸(無音静寂)への人間の旅が始まる。

tokyotoadのtoadはガマガエル(ヒキガエル)のことです。昔から東京の都心や郊外に住んでいる、動作がのろくてぎこちない、不器用で地味な動物ですが、ひとたび大きく成長すると、冷やかしにかみついたネコが目を回すほどの、変な毒というかガマの油を皮膚に持っているみたいです。

 

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↑ 不本意にもこんな野暮なことを書かなければならないのは、過去にちまたのピアノの先生方に、この記事の内容をパクったブログ記事を挙げられたことが何度かあったからです。 トホホ...。ピアノの先生さんたちよ、ちったぁ「品格」ってぇもんをお持ちなさいよ...。