ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ道楽の日々

②老化による絶対音感のズレの影響が最も深刻なのは、クラシックピアノ奏者かもしれない(その②)

noteに書いた記事:

②老化による絶対音感のズレの影響が最も深刻なのは、クラシックピアノ奏者かもしれない(その②)|ピアノ方丈記@note

のコピペです👇

 

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記事(その①)から何日か空いてしまったので、
記事(その①)の内容もそのままつけます。
記事(その②)の内容を、末尾に加筆しました👇


====記事(その①)====

 

私は、ピアノを再開した50歳頃に、子どもの頃の絶対音感が半音~全音ズレてしまっていることに気がつきました。 

 

その後、絶対音感を取り戻そうといろいろやりましたが、
60歳を過ぎたら、私の絶対音感は天翔けるペガサスのようなフリーダムぶりを発揮して、天空を飛び回って、
全く思うようになってくれなくなりました。  

 

幸いにも、当時から
絶対音感は50歳前後でズレはじめて、60歳の頃には完全に失われる」
という説を、ネット動画で知っていたので、
アッサリと絶対音感を捨てて、相対音感の獲得に舵を切り、現在に至っています。 

 

数年間の工夫のおかげで相対音感はほぼ獲得できて、すぐ移調して弾けるなど、相対音感の便利さをエンジョイしていますが、 

その邪魔をするかのように、子どもの頃のピアノ教室で培われた絶対音感の狂った亡霊が、演奏中に悪さをするような、そんな気がしています。 

 

私は、直近の数年間で相対音感に乗り換えたので、
 子どもの頃から人生ずーっと絶対音感だけの人や、
 人生ずーっと相対音感だけの人や、
 人生ずーっと絶対+相対の両方を使ってきた人が、
老化によってどのような影響を受けるのか、よくわかりません。 

 


ただ、個人的に思うのは、

高齢化によって、加齢による絶対音感のズレを社会として認識せざるを得ない状況になっていくのは必定だと思います。 

 

ちなみに、

伝説的なピアニスト兼作曲家の二大巨頭である、ショパンとリストは、偶然にも、40歳以降は、プロの演奏活動をしていません。

ショパンは、単に40歳直前に死亡したからです。

もしショパンが70歳ぐらいまで生きたなら、晩年の演奏はどんなふうだったでしょうかね?

 

一方、
リストは、ピアニストとしてのキャリア全盛の30代半ばで、ピアニストのキャリアをスパッと辞めてしまっています。

もしかすると、
リストは、ピアニストが齢をとると、どのようなことになるのか、わかっていたのでは?

若い頃に一世を風靡した先輩ピアニストたちが、齢をとったらどのような晩年をすごすことになるのかを、もしかすると垣間見てきたのでは? 

だから、
自分のキャリアがいちばん高く売れる、演奏家として全盛期で、スパッとピアニスト稼業を辞めて、作曲家・音楽監督・教育家に転身したのでは?

 

高齢化社会の現代においては、

音楽業界の第一線で活躍してきたベテランのミュージシャンやアーティストが、齢とともに音を外すことが増えたとしても、そういうものは聴かなかったことにして、暖かく聴き続けていくのが、こちらも超高齢化になっていくお客さんの心がけかなと思います。  

 

ステージの上の彼らも齢をとっていく。
ステージを眺めるお客さんも齢をとっていく。
お客さんの耳もどんどん悪くなっていく。 

 

そんな超高齢化社会の中で、
音楽と、老化による絶対音感のズレとを、
どこかしらでうまく折り合いを付けながら、音楽を楽しんでいきたい。 

 

👆前置きはここまでで、以下のリンク記事の下から、この記事の本文になります。

https://note.com/piano248/n/n74d061f049ac

https://note.com/piano248/n/n42e5a4b72a04

https://note.com/piano248/n/nad6f6dbeb224

 

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前置きが長くなりましたが、
ここからが、この記事の本文です👇 

 

【老化による絶対音感のズレの影響が最も深刻なのは、クラシックピアノ奏者かもしれない(その①)】


と私が思う理由は、

 ①ピアノは移調楽器ではないから 

 

 ②クラシックピアノ奏者はアコースティックピアノしか弾かないから

 

 ③クラシックピアノは楽譜絶対主義=絶対音感絶対主義だから 

 

 ④子どもの頃から楽譜と絶対音感に無条件に頼りっきりで、音程把握能力が育たなかったから

です。  

 

詳しく見ていくと、

 



ピアノは移調楽器ではないから: 
 
 ピアノを含めたアコースティック鍵盤楽器の奏者は、
 「楽譜のC4を弾くとC4の音が出る」のが当然だと思っていますが、
  楽譜のC4を鳴らすと違う音が出る楽器があります。 
 
 サックスがそうです。 
 もともと、
 サックス奏者は、楽譜に書いてある音を脳内でズラして認識して演奏している。


 加齢による絶対音感のズレは、譜面や鍵盤の音と、自分の脳が認識している音がズレることで、例えば:

 (1) Dメイジャーのキーの曲を聴きながら、頭で鳴っている音はD♭メイジャーのキーだったり、

 (2) ギターを音叉(チューナー)に頼らずにチューニングしたら、全ての弦を半音下にズレらしてチューニングしてしまった! とか、

 (3) ある音を弾こうとして鍵盤を押したら、自分が思ってもみなかった音が鳴って、当の自分がビックリした!

みたいな現象が起きてくると思います。 


 これは、「楽譜のC4 = 鍵盤のC4 = 音のC4」と絶対音で絶対的につなげて絶対認識しているクラシックピアノ奏者にとっては、たいへんな悪夢になると想像できます。 

 
 「サックスなどの移調楽器の奏者は、脳内にカポを持っている」
とアダム・ニーリーさんが動画で言っていましたが、
 
 脳内のカポを使って楽譜の音をズラして演奏する移調楽器奏者は、音ズラし認識に慣れているので、
 加齢によって絶対音感がズレることに、或る程度の耐性を持っているのではないか、と想像します。
 

 ギター奏者も、耐性を持っているのではないかな?

 ギターはカポの使用によって、同じ指使いでキーをズラして弾くことができるからです。
 
 だから、
 ギター奏者も、楽譜に書いてある音と、脳内で認識する音がズレることに、慣れている。

 
 ところが、
 アコースティック鍵盤楽器は、楽譜に書いてある音をそのまま鳴らすので、
 
 アコースティック鍵盤楽器奏者は、「脳内での音ズラし」に全く慣れていない。  
 
 幼少のころからのクラシックピアノ教育によって、絶対的な絶対音感を獲得して、それを誇っていても、
 
 加齢によって絶対音感が半音~全音ズレ始めると、生まれて初めて経験する音認識のズレの衝撃を、モロに受けてしまうのではないか。  

 熟達したクラシックピアノ奏者は、A=440Hz近辺に調律されたピアノの音の微妙な違いを認識できるのだと思いますが(たとえばA=440HzとA=444Hzの違いとか)、もっと大幅の半音~全音のズレには慣れていないと思われるので、脳内の音認識のリンクの混乱が激しいのではないか?

 



クラシックピアノ奏者はアコースティックピアノしか弾かないから

 

ポップスやロックのアーティストのサポート演奏をするような、ケンバン全般を弾くキーボーディストは、
加齢による絶対音感のズレに対して、或る程度の耐性を持っているだろうと思います。

ポップスのコンサートで、出だしのイントロの重要なフレーズを弾き間違えないように、
エレピやシンセのキーを「Bメイジャー⇒Cメイジャー」のように、
半音ずらしてセットしておく場合があるそうです。 

暗転して場ミリしか見えないような真っ暗な中で、手さぐり状態で弾き始める場合、
単純な並びの白鍵キーで弾いたほうが間違いリスクを減らせるからではないか、と想像します。  

一方、
クラシックピアニストは、基本的にアコースティックピアノしか弾きませんから、
このような「キートランスポーズ」設定の演奏経験が皆無の人がほとんどではないでしょうか。

従って、
加齢によって絶対音感がズレはじめると、「楽譜=鍵盤=実際に鳴る音」の不整合を、生まれて初めて体験することになる。

齢をとってからの、この衝撃は大きいと思われます。 


非クラシック分野の、ジャズやロックやポップスの鍵盤奏者は、
電子鍵盤楽器でキートランスポーズ機能を使った実演奏の経験が有ったり、
ピアノ以外の楽器もこなす人たちが少なくない。 

音楽業界の頂点で演奏仕事で実際に稼げている超一流ケンバニストに、
ギターやベースもこなす人がゴロゴロしている。 

クラシックピアノ出身者で業界の頂点で生き残っている人たちは、
自分は弾けないながらもベースやドラムといった他楽器のジャンルに詳しかったり、
他楽器奏者から学ぶ姿勢を持っている印象があります。


====ここから記事(その②)です=====

 

クラシックピアノは楽譜絶対主義=絶対音感絶対主義だから

  子どもの頃からクラシックピアノを習うと、絶対音感は育つ代わりに相対音感が全く育たない原因は、楽譜に書かれた音と、鍵盤上の音の絶対位置のリンク付けが脳に強く刻まれてしまうからではなかろうか。

 私の場合、幼稚園に入るか入らないかの頃からクラシックピアノを習っていた結果、小学校の音楽の授業で歌を移動ドで歌うことが全くできなかったことを、はっきりと覚えています。

 更に、中学に入ってクラスメートたちとフォークギターを始めた時に、カポを使うと弾けなかったからです。
 このカポに恐れをなしたことと、Fメイジャーが押さえられないことから、早々にギターから脱落しましたが、
 ピアノを習っていないクラスメートたちがカポを使って何の問題も無く平気で弾いていたのを、衝撃的に覚えています。

 それから、
 クラシックピアノ経験者は、初見演奏は得意な一方で、耳コピが苦手だったり、瞬間的に移調して弾くことが苦手な人が多い印象があります。

 これらのことから、私は、
 クラシックピアノ奏者は、楽譜という視覚情報の再現演奏が絶対的に優先される世界で育成されるので、もともと聴覚情報である音楽の本質的な能力が低い人も多く含まれているのではないか?と推測しています。 

 もともと聴覚情報認識能力が低い人が、加齢によって絶対音感がズレると、受ける影響も深刻なのではないか?
 
 


子どもの頃から絶対音感に無条件に頼りっきりで、音程把握能力が育たなかったから

 

  絶対音感があると、音程を意識的に把握する必要無く、鍵盤を弾くことができると思います。
 
 そういう人たちは、音楽理論書の冒頭に載っているような、基本的かつ絶対的に重要な内容に、目もくれずに生きてきたのではないでしょうか。 

 たとえば、長7度や増5度などの音程のことを、知っているには知っているんだけど、それを、脳の根源的なレベルでしっかり把握することなく来てしまっているのではなかろうか。  

 なんとなく聞けばすぐに弾けちゃうような人たちは、たとえばツーファイブのコード進行を意識して覚えようとしなくても、得意げに耳コピで演奏できてしまう、そういう安易な感じで弾いてきたのではないでしょうか?  

 そういう人たちが、50歳や60歳になって、絶対音感がズレたり失われたりすると、彼らの絶対的な基盤である絶対音感が信用できなくなった時に、
今まで歯牙にもかけなかった音楽の根源要素を全く把握していなかったことに、初めて直面するのではないか。  

 初めて直面したとき、彼らはどうするのか?  

 私は今、初めて直面しています。

 そして、
「聞いた曲を何となく弾けば弾ける」という安易なことが、もはやできなくなった今、初めて意識的に考えながら弾き始めています。  


絶対音感を持っていると、若いうちは得かもしれませんが、
齢をとって絶対音感がズレると、若い頃に得した分のツケが待っている。
そう感じます。
  

 


~ピアノ方丈記