ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ道楽の日々

シニアのピアノと指の健康寿命:「へバーデン結節」(その②)

 

前回の記事: 

中高年ピアノ・シニアピアノ・大人ピアノと指の健康寿命:「へバーデン結節」(その①) - ピアノ方丈記

の続き。

 

中高年ピアノ・シニアピアノ・大人ピアノで

指の健康寿命への注意が不可欠。 

しかしながら、ピアノ教育産業は、少子化の穴埋めのために、これらの新たなターゲット層にやみくもに訴求するばかりで、彼らの指の健康寿命への配慮をしているとはとても思えない。

だから、

ピアノを趣味にしたいと望む中高年・シニア・大人みずからが、自衛策を取るしか方法は無い。

 

ピアノ教師が指の健康寿命に詳しいと思ったら大間違いだ。 以前の記事で「へバーデン結節になったピアノ教師にピアノを習いたいとおもいますか?」と書いたが、いやじつは、へバーデン結節になったピアノ教師の実体験のほうが参考になるかもしれない。 彼らがどのようなピアノの弾き方をしてへバーデン結節になったか、そして、どうすればへバーデン結節にならずに指の健康寿命を守ることができるかについて、反面教師になり得るからだ。

逆に、へバーデン結節になったことのないピアノ教師に習う方が危険かもしれない。 若いピアノ教師は、中高年ピアノ愛好家が老化による身体機能の劣化によって無理な練習に追い込まれることについて、リアルに想像することができない。 また、中高年のピアノ教師の中には、もはやピアノをまともに弾かなくなっているからへバーデン結節のような指の障害にならない人たちが含まれている、と思われるからだ。 そのようなピアノ教師は、とかく教科書通りの口頭指導だけだったり、審査員目線で批評するばかりになりがちで、弾くほうにとっては、有形無形の精神的プレッシャーを受けることになり、追い立てられるように「発表会で完璧に弾くために」「コンクールでしくじらないように」と、日々の自宅練習で老体の自分を追い込んでいき、自分の年齢と手の大きさには到底無理な「上級曲」の練習を狂ったように重ねた結果、へバーデン結節などの指の障害を発症する可能性があるからだ。 生徒がへバーデン結節になっても、へバーデン結節になったことのないピアノ教師は、どんなに生徒が傷つき苦しんでいるか、知る由もないだろう。 子供の頃に習ったピアノの先生に、大人になって習った際に、先生の手は片手でオクターブが届くか届かないかで、しかも指がとてもキレイだった。 このような小さい手でクラシックピアノの「上級曲」をマトモに弾くことは不可能で、マトモに弾いていれば無理して弾くから指が節くれだっているはずだ。 ところが、先生の指はキレイだった。 ということは、先生は「上級曲」をマトモに弾けないか、あるいは、マトモに弾いていないかの、どちらかということだ。 ジストニアバネ指の話も、「誰それがそうなった」と、人の話ばかりだったので、「この人は、自らがピアノ演奏に関わる障害を経験したことが無いんだな」という印象を私は持ったのだ。 このような、手が小さいピアノ教師でも、平気でリストやラフマニノフの曲を指導できるのが、ピアノ教育の錬金術だ。 これが、「ピアノを習う場合は、指の障害の知見の無いピアノ教師からの口頭指導を真に受けて必死に練習して指を壊さないように、習う側がじゅうぶんに注意しなければならない」と私が思う理由だ。 

楽譜どおりにちゃんと弾けないイコール減点対象!のピアノ教育の世界は、大人ピアノ愛好者にとっては蟻地獄だ。 真面目で実直な人ほど、熱心に練習し過ぎて、指に無理をかけて、指の健康寿命を縮める結果になるだろう。 

 

ネット検索でひっかかってくる見出しをざっと見る限りの印象だが、

へバーデン結節になる人には、ある一定の傾向が有るようだ。 それは: 

クラシックピアノ愛好家 

「上級曲」とくにショパン・リスト・ラフマニノフを練習する 

中高年の女性が多い 

これらの傾向は、もっともである。理由は:

 

クラシックピアノ愛好家

クラシックピアノは、楽譜どおりに寸分たがわず弾くことを要求されるから。 自分の手の大きさに合わせて編曲することが許されない。

 

「上級曲」とくにショパン・リスト・ラフマニノフを練習する: 

これらの作曲家の曲は、片手で10度以上に届かないと、手の高速横移動が必要になり、結果的に小指が突き指弾きになりがちだから。 ショパンは小指が長かったし、リストとラフマニノフは片手で12度が届いた。 また、これらの作曲家の作品は、ドラマチックに情熱的に弾き放つ!イメージが一般に有って、手が小さい人がぶっ叩き弾きになりやすいから(指が長くて片手で10度以上に届く人は、指が長いし腕も長いだろうから、手のひらを空中でヒラヒラと慌ただしく翻(ひるがえ)しながら高速で動かす必要が無いので、情熱的に弾き放とうとしても、あまりぶっ叩き弾きにならないような気がする)。 

【毎日何時間も+長期間にわたって+突き指弾きぶっ叩き弾きへバーデン結節】という公式が成り立つと、私は思う。 

これに対して、バッハやモーツァルトの作品には突き指弾きぶっき弾きの要素が少ないのではないだろうか。 それは、バッハのケンバン曲はハープシコード曲で、モーツァルトハープシコード~初期のピアノで、ハープシコードには現代のピアノについているサステイン(ダンパー)ペダルが無く、初期のピアノも軽く短い音しか出なかったので、左手の伴奏に劇的な大跳躍や10度越えの高速アルペジオが無く、左手は基本的にクロースポジションコードの♪チャッチャッチャッチャ♪ズンチャッチャッチャだし、ハープシコードをいくら情熱的に弾き放っても音の大きさは全然変わらないから、大音量を出すためにぶっ叩き弾きする意味が無いからだろう。 したがって、バッハやモーツァルトの曲は、手が小さい人でも手のひらを横っ飛びさせながら無理やり弾くことが少なく、曲自体にぶっ叩きたくなるような情熱感もあまり無いから、指に負担がかからない曲が多いからではなかろうか。 ベートーヴェンになると、やや微妙になってくるかもしれない。 

 

中高年の女性が多い: 

女性は男性よりも手が小さく、片手で10度が届く女性は少ないから。 無理して届こうとして、手を高速で左右に移動することになり、結果として小指が突き指弾きになる。 しかも、的(ケンバン)が離れれば離れるほど、外す確率が高くなるから、100%当てるために猛練習をすることになり、突き指弾きが指数関数的に増えていく...。 そして、

女性のピアノ人口が男性よりも多いから。ピアノ教師の大多数は女性だ。 そして、

中高年になると成長ホルモンがとっくの昔に出なくなっているので、骨や肉の細胞分裂の速度が遅くなっている(つまり老化だよ!)ので、無理やり突き指弾きで弾いたことによる骨や肉の損傷の回復が遅れ、回復しないうちにどんどん突き指弾きで弾き続けるので、へバーデン結節を発症してしまう。

ちなみに、ウィキによると、ショパンとリストは40歳以降はピアニスト稼業をしていない。 ショパンは39歳で死亡、リストは35歳でピアニスト稼業をスパッと引退して音楽監督・作曲家・音楽教育者に転身した(弟子によると晩年のリストはアル中だったようだ)。 当の本人たちでさえ、40歳以降はそれらの「上級曲」を人前で弾いてないよ! 

つまり、

クラシックピアノの「上級曲」は、そもそも、若い男性が、成長期の男性ホルモンであるテストステロンの分泌が全開の年齢の頃に弾くものであって、子どもや嫁入り前のうら若きお嬢さんや、血液検査の結果に一喜一憂するメタボなオッサンオバサンや、文字どおり'枯れた'おじいちゃんおばあちゃんが弾くものではない。 つまり、'女・子ども・老人'がやるような音楽ではなく、人間社会における肉体的な最強者である若き男性たちが戦闘的に行う音楽なのだ。 

リストがピアニストとして全盛の頃、「リストマニア」という造語があったそうだ。 ビートルズやマイケル・ジャクソンのコンサートで、追っかけファンの若い女性がぶっ倒れたりしたよね。 あれと同じような現象がリストのリサイタルで多発したそうだ。(20231204に加筆: ↑ この文章をよーく読んでくださいね! 私は決して、「リストのコンサートでファンの若い女性がぶっ倒れた」とは書いていませんよ!「リストマニア」に関する英語版ウィキにも、そのようなことは書いてなかったよ。「リストマニア」に興味を持った人がいたら、こんなどこの誰ともわからない素人のブログの文面を安易にコピペするんじゃなくてさ、自分自身でちゃんと具体的な記述を詳細に調べてからウィキなり何なりを更新するといいとおもうよ。) 

私の子供の頃は、「幼い頃にピアノを習い始めても、ショパンを弾くまでには何年もかかる」といわれていたが、昨今は、世界中の10代後半の男子が「1年でショパン/リストの〇〇を弾けるようになった」と演奏動画を上げている。 そうなんだよ。指が長くて、若さが有り余っていて、何かに発散しないとどうしようもない若者にとっては、1~2年ぐらいで楽譜どおりにケンバンを叩けるようになるんだよ。 指が長くて届けば、彼らにとっては、さほど難しくないんだ。 クラシックピアノ曲は、メロディや伴奏がパターン化されていて、同じパターンが繰り返し登場するから、若くてアタマが柔らかいとすぐ覚えちゃって、しかも指が長いと難なく届いちゃって、若いから筋肉に瞬発力があって力が有り余っていたら、若さのパワーと勢いで弾けちゃうんだよ。 いやもともと、これらの「上級曲」は、作曲&演奏した当の本人たちが、男性的な若さのパワーと勢いで人前で弾いていたのだ。 「10年もかかって、しかも10年かかった後にようやく弾き始めても難曲」なのは、女の子が弾く場合じゃないかな。 10年かかって10代後半になって大人の女になっても、女性の手は小さいから依然として難曲、というか、手が小さい人にとっては、未来永劫死ぬまで難曲というか、生まれつき無理な曲なんだよ。 

 

私の直観なので当たっているかどうかわからないが、多分、バイエルやブルグミュラーを練習している人でへバーデン結節を発症する人は、あまりいないんじゃないかな?と思う。 というのは、10度以上の高速アルペジオ弾きやオクターブの高速メロディ弾きがでてこないでしょ? 

だからといって、ショパンやリストやラフマニノフを無理やり練習してへバーデン結節になってへバーデン結節は '上級曲' を弾く人の名誉の負傷!」と言わんばかりに、へバーデン結節を患ったことを自慢げに言う人がいたら、その人は「私はバカ\(^o^)/です!」と言っているようなものだ。 

「君子危うきに近づかず」と、いにしへの時代から言われるように、リスクを避けて無傷で穏やかに長生きすることが、賢者の証(あかし)だ。 登山でも「引き返す勇気」が生死を分ける。 無駄にリスクに近寄って命を落とすことを「犬死に」というね。人間レベルの死に方じゃない、ってことだ。 自分の身体に無理をかけて「上級曲」を練習しまくってへバーデン結節でもなんでも発症するのは、自分をちゃんと把握・律する力に欠ける、低級つまり犬畜生レベルの人間の証だ。 

私は、愛好ジャンルはクラシックじゃないけど、自分の身の程を把握せずに調子に乗って弾きまくってへバーデン結節になった低級人間つまり犬畜生レベル\(^o^)/だったことが、よくわかりました。 

まだ本当に書きたいことまで書けてないから、たぶん続くね...。  

 

いま一度、自分への戒めとして、歴史的事実の認識(ウィキ調べ): 

片手で12度が届いたリストは35歳をもって現役ピアニストを引退した(その後のリストは、74歳で亡くなるまで、音楽監督・作曲家・ピアノ教育者であって、ピアニストではない!)。 ちなみに、 

ショパンは39歳以降はお墓の中

こう書くと、「ジャズなら大丈夫なんでしょ?」との誤解を生むかもしれないので、追加すると、

バド・パウエルは41歳で、ジョージ・ガーシュインは38歳でこの世を去った。 ビル・エヴァンズは51歳で死亡したが、晩年は薬(ヤク)中でマトモにピアノを弾けなかったのではないだろうか。 手の大きさについては、各人のトランスクリプション譜を見ると、この3人は片手で10度以上が届いたと、私は思う。 日本の出版社が出している『ビル・エヴァンスを弾きたくて』という楽譜は、おそらく、ビル・エヴァンズ本人が常用したオープンポジションコードやビッグコードを小さな手でも弾けるように改変した楽譜なのではないか?そのことを、タイトルの「弾きたくて」に匂わせているのではないか?と私は想像する。つまり、「本当はビル・エヴァンズの実際のトランスクリプション譜を弾きたいんだけど、当然のように片手10度が連発するので、小さな手では弾けなくてガッカリ。でも、この小さく改変した譜面なら、小さな手でもビル・エヴァンズをトランスクリプション譜どおりに弾いているかのような気分を味わえます」ということではないだろうか。

セロニアス・モンクは64歳でこの世を去ったが、晩年の10年間は引きこもってほとんどピアノを弾かなかったので、セロニアス・モンクのピアニストとしての寿命は50代半ばだった。 「手が小さかった」と言われるモンクだが、高身長の割には手が小さかったということだろう。 もっとも、モンクのトランスクリプション譜には片手で10度のコードはあまり出てこないけどね。 ただし、

一般的に、ジャズピアノのトランスクリプション譜には、ジャズピアノならではの超絶技巧が存在する。 具体的には、ストライドラグタイムの左手の大跳躍伴奏。 右手でオクターブユニゾンやオクターブのパワーコードを連打するメロディーライン。 そして、当然のように連発される、5音のビッグコードや、左手のオープンポジションコードを、小さな手でいちいちバラし弾きすれば、クラシックピアノ上級曲の10度アルペジオ(=和音のバラし弾き)と同様の、届かない手での無理矢理弾きになる。 これらの超絶技巧に加えて、ジャズ特有のリズムとパーカッシヴな演奏が、届かない小さな手にさらなる負担を課す。 

さて、

私は片手で何度まで届くかな? そして

私はいま、何歳だっけ\(^o^)/?

ほんとに私は犬畜生レベル\(^o^)/だったよ...。

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