ピアノ方丈記

音楽の彼岸にて【指の健康寿命を気遣いながら!】シニアのピアノ道楽の日々

ピアノの防音をめぐる所感

 

今年もすでに10日が過ぎ去ってしまった。 年末年始は、できる範囲でトランスクライビング(耳コピ)したり電子ピアノを弾いたりしていた(いままで苦情を受けたことはないが、アコピの部屋は防音室ではないので、正月3が日はアコピで音を出すのは控えた)。 

 

電子キーボードによって、「鍵盤楽器を通して音楽に馴染んでマスターしたい」と願う人たちの門戸がカンブリア紀のように爆発的に広がった、と感じる。 電子キーボードが一般庶民の手に入る以前の時代は、鍵盤楽器による音楽はアコースティックピアノを買ってもらえる限られた人だけに独占されていた(つまり、その限られた人たちに音楽の才能が有るかどうかではなく、親がカネを持っているかどうかが、音楽の道への必要条件だった。音楽的に?なピアノ教師が存在する理由がこれだろう)。 ところが、電子キーボードの出現によって、だれでも鍵盤楽器を気軽にポチれて自分の部屋で始められて夜昼の別なく弾けるようになった。 音楽の才能が有れば誰でもそれを開花させることができるようになったことは、音楽と鍵盤楽器にとって大きな吉報だ。 

 

上記で「電子キーボード」と書いたのは、アコースティックピアノと同様の鍵盤を持つ電子ピアノには騒音の問題があるからだ。 電子ピアノは、騒音については実のところはアコピと大差無いだろう。 というのは、ヘッドフォンで音は消せても、打鍵によるカタカタ音が不快な騒音になるからだ。 むしろ、電子ピアノは、打鍵のカタカタ音が最も気になる鍵盤楽器ではないか、と個人的に思う。 アコースティックのグランドやアップライトに比べて、電子ピアノは躯体そのものが小さい。 小さいということは、打鍵の衝撃を躯体の中で吸収するキャパが少ないから、直接床に逃がすことになり、これがカタカタ音になる。 これに比べて、アコースティックのグランドピアノは、躯体自体が大きいから躯体の木部で振動をかなり吸収できるだろうし、そのうえ、床に接する面積が車輪3つだけだ。 音楽音の騒音は甚大だが、カタカタ音の騒音は出にくい造りといえる。 アコースティックのアップライトもグランド同様だが、アップライトの場合は、壁に接するように置くので、壁を伝わる音による騒音が大きいかもしれない。 もちろん、グランドピアノは大型になればなるほど大音量が出るから、防音工事や、弾く時間に気を付けるなど注意が必要だ(これはアップライトも同様だ)。 個人的な経験では、ヘッドフォンをつないで無音にした電子ピアノによる打鍵のカタカタ音が最も不快に感じられるようだ(消音機能使用時のアコピも同様かどうか、私は経験がないのでよく知らないが)。 音楽が伴わない「カタカタだけの音」は、音楽の音よりも煩わしく感じられるのかもしれない。 電子ピアノを板敷きの床の上に直置きすると、下の階にいやおうなくカタカタカタカタ響く。 そこで、アマ〇ンで、ピアノ教師の実家のゴム加工工場が製作したゴム緩衝材を買い求めて、電子ピアノの下に4か所敷いて、電子ピアノが直接床につかないようにした。 「これでもう階下に振動が伝わらないだろう」と夜間にヘッドフォンで弾いていたのだが、家族によると相変わらずカタカタ音がするそうだ。 この製品の性能自体に問題があったのは確かだろうが、電子ピアノのカタカタ音を防ぐのは並大抵ではない、ということがよくわかった。 最近は、カタカタ音が少ない電子ピアノも売られているらしいが、ここで、ふと考えてみると、【手ごろ価格の電子ピアノを購入+後付けでカタカタ音を防ぐためにいろいろ調べたり緩衝材をとっかえひっかえ買い続けたり...】の手間と労力を考えたら、いっそのこと、最初っから部屋全体に防音防振施工をしてアコピを入れたほうが、最初の出費は大きいけれど、そのあとのストレスが極端に少なくなるから、その分幸せな音楽ライフを過ごせるのではなかろうか、とも思ったりする。 もっとも、大きな部屋になればなるほど、防音工事の金額は雪だるま式に増える。

 

騒音の問題は、ピアノに限らない。ドラムを筆頭に、ボーカルや義太夫・詩吟やダンスまで含めて、音声や振動を伴うあらゆる芸術活動につきものだ。 都心のライブハウスがビルの地下にあることが多いのは、防音には地下室が最も有効だからなのか? 繁華街の大型ビルに入っているライブハウスを除いて、小型の建築物の地上階や二階以上にあるライブハウスには、ドラムセットや大掛かりなPA装置が無い、という印象があるが、騒音規制があるのかもしれない。 私が調べた限りだが、防音効果を上げるためには、防音材に重い鉛の板を使うらしい。 私が持った印象は、完璧な防音室を作ったら、楽器音を外に漏らさないばかりか核シェルターにもなる、というイメージだ。 それほどまでに、ガチな防音室を作るのは大事(おおごと)らしいなぁ、と感じた。 でなければ、絶海の孤島のような場所に住むか、あるいは、ピアノの音がかき消されるような24時間何らかの音が鳴っている不夜城の繁華街や幹線道路沿いに住むか。 

そんなことを考えなければならない時間や脳を無駄にとられない、電子キーボードは、鍵盤がカタカタしないし、全体の音量を調節できるし、時を忘れて音楽を探究するのに便利な楽器だ。 昼間しか弾けないアコースティックグランドピアノを毎日短時間しか弾けない人と、ソファーでもベッドでもどこでも好きな時に電子キーボードを弾き続けられる人と、どちらが、本当の意味の音楽の達人になれるだろうか。  

 

アコピと電子ピアノの騒音の性質の違いについて、もうひとつの点があると思う。 一戸建て住宅の場合は、電子ピアノのカタカタ音は、自分の家の中の隣の部屋や下の階の部屋に伝わって煩わしく感じられる、という印象がある。 だから、電子ピアノについては、マンションやアパートといった集合住宅では、近所迷惑にならないようにカタカタ音の騒音に注意する必要があるかもしれない。 一方で、一戸建ての場合は、電子ピアノのカタカタ音は自宅内の騒音に収まる可能性が高いだろう。 アコースティックピアノは、グランド/アップライトの別なく、そもそも音自体が大きく騒音が外に漏れやすいので、集合住宅では言うまでもなく防音工事が必要だろうし、閑静な住宅地の一戸建て住宅でも、防音工事をしたり、家の中でのピアノの置き場所に気を遣ったり、弾く時間に配慮する必要があるだろう。 

ほかの鍵盤楽器についてだが、電子オルガンを(音量にもよるだろうが)ヘッドホン無しで弾くと、芝生の小さな庭が付いたぐらいの郊外の住宅地(第一種住専地域)では、ペダル鍵盤の低音の音と振動が近隣に伝わって、低周波騒音と同様の不快感を近所に与える場合がある。 アスファルトの道路や地下の上下水管を伝わって近隣に音が伝わるのだろうか。 私は過去に、郊外の住宅地で、近所のどこかの誰かが夜間に演奏する電子オルガンの低音がボーー-ボーー-と聞こえてきて、低周波振動まで感じられて、気になった経験がある。 郊外の住宅地は夜になるととても静かになるから、余計に気になったのだろう。 この経験から、電子ピアノをオルガン音で弾く場合についても、ヘッドホンを使うか、または音量に注意したほうがよいだろう、と感じる。  

 

以上はすべて私のごく個人的な経験と所感だ。 ピアノ演奏による騒音の問題の程度は、「戸建てか集合住宅か」や、「住宅専用地域か商業/工業地域か」や、「ピアノが何階にあるか」や、「その建物の工法」や、「ピアノの種類や大きさ」や、「ご近所さんがどんな人たちか」や、「ふだん自分がどんな近所づきあいをしているか」や、「一日にピアノを何ぐらい弾くか(←「何時間」ではない)」等によって、千差万別だろう(毎日「何時間」も弾く場合は、何らかの防音対策が必要だろう)。 

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