前回の記事:
ピアノを買う前に(私が個人的に)押さえておきたかったポイント① - ピアノ方丈記
の続き。
私が「ピアノを買う前に、もう少しちゃんと考えておけばよかったなぁ...」と後から思う②番目は:
②ピアノを置く環境のじゅうぶんな事前整備と確保
じゅうぶんながキモだ。 ツメが甘いと、後になってどうすることもできない悩みがいろいろ噴き出したり、後付けでなんやかやとやらなければならなくなるし、やったところでどっちみち中途半端な結果になるし、費用も五月雨式(さみだれしき)にポロポロ出ていくことになるので、最初が勝負だ(った...)!と、個人的に思う。 以下の要件について、事前にもっとしっかりじゅうぶんに検討・計画しておけばよかった...:
(1)ピアノの搬入ルート:
ピアノを買うお金があって、ピアノを置ける部屋があっても、外からピアノをその場所に搬入できるルートが確保できなければ、念願のピアノを置けない! そして、その時になって無理やり搬入ルートを作ろうとすると、たいへんな大事(おおごと)になる。 新築にしつらえた自慢の「はめ殺し」の大きなガラス窓を、ピアノの搬入のために、工事で取り外(してせっかくのピカピカの新築に早くも傷をつけ)なければならなくなったり、搬入をゴリ押しして壁に穴が開いてしまったり、最悪の場合は、無理な作業でピアノ運送業者さんが腰を痛めて彼らの一生の健康が損なわれる可能性もある。←これが、いちばん怖い。自分の欲望を無理やり押し通して誰かの人生を傷つけたら、いつか必ず、世の中のどこかから、何らかの形で、自分に「倍返し」で帰ってくる(世の中、それ相応のことをした人には、後になって、それ相応の結果が利息付きで戻ってくるからだ)。 そうならないために、自らのピアノへの異常な煩悩の愚かさにハタと気づいて、今回(の人生で)は前向きに明(あき)らめるしかない。 それに、音楽はピアノに限ったものじゃない。 他の楽器や、(総額ベースでアコピよりおカネがかかるだろう)シンセサイザーなどの電子キーボードの世界に突入してパソコンDTMも駆使して時代の最先端の音楽を楽しむのもいい(←私は、電子音楽+DTMの方が、最終的にはアコピ1台よりも遥かにおカネがかかるだろう、と思う。「接続音楽」と私は個人的に呼んでいるけど、電気・電子楽器や機材をケーブルでつなぎ(接続し)始めると、当然パソコンやタブレットにつなぎたくなるだろうし、次から次へとつなぎ足したくなって、楽器や機材やIT端末やDTMソフトやMIDI音源をちょこちょこ買い足していき、それらの個々の値段は基本的には高くて数十万円ぐらいだろうが、どんどん買い足してどんどん接続していくうちに、いつのまにか使ったおカネの総額が数百万円を超えていた!みたいなこともあるのではなかろうか。「接続音楽」は、各パーツの単価が鉄道のジオラマよりも高いけど(←いやいや!後日、鉄道ジオラマの車両1両の値段を知って私は腰が抜けたよ!)、鉄道のジオラマのように、一度始めたらその魅力に取りつかれてどんどん規模が大きくなって出費も増えていく分野なのではないか、と私は感じる。以前に「総額2000万円の鉄道ジオラマをこしらえた旅館のご主人」を紹介するテレビを見たが、その旅館は全国から鉄道ジオラマファンが泊りにくるとのことで、2000万円の鉄道ジオラマは旅館業に貢献しているとのことだった。同様に、「接続音楽」の世界は、現在の本物のプロのピアニストの実際のビジネスの世界だろう。各種ケンバン楽器を弾きこなすケンバニストは当然だが、アコピメインのピアニストも「接続音楽」に関与せずに本物のプロの音楽業界にいることは不可能だろう)。
ピアノの搬入ルートに話をもどして、
グランドピアノよりも、アップライトピアノやアップライトピアノ型の電子ピアノ(分解搬入できないモデル)の場合には、搬入ルートについて特に要注意だと思う。 普通の家では、'普通の幅'の廊下を直角に曲がって'普通の幅'のドアから部屋に入れようとするとドアにつっかえてしまうとか、階段の曲がり部分でつっかえてしまうとか、アップライト型のピアノが通らない箇所がある可能性が非常に高い。「アップライト型はグランドより小さい」という先入観が、命取りになるかもしれない。 普通の住宅でアップライトピアノを人力で持ち上げて階段を通って搬入できるとは考えないほうがいいと、個人的に思う。 分解搬入できないタイプの電子ピアノも、88鍵あれば幅はアコピとほとんど変わらないから、「電子ピアノはアコピより軽いし、階段経由で運送屋さんに運んでもらおう」と思っていたら、階段の形状によってはつっかえたとか、廊下から直角に部屋に入れられないとか、悲劇が起きる可能性がある。 新築で家を建てる場合、家を設計する段階で、余裕を持たせたピアノ搬入ルートを確保しておきたい。 建売りや中古一戸建てやマンションの場合は、希望のピアノが搬入可能かどうかを、事前に十分に検討しておきたい。 また、気兼ねなくピアノを弾けるために、下記(2)防音・防振・床補強の必要性についても同時に検討する必要がある。
(2)防音・防振・床補強:
ピアノのスムーズな搬入のためには、ピアノを置く部屋が道路や庭に面していて、掃き出しの大開口の窓があることが、最も望ましいだろう。
しかしながら、これらのピアノのスムーズな搬入のための好条件は、裏を返すとそのまま、部屋の防音性の弱さになってしまう。
それから、ピアノの重量を懸念して床の補強に注意が向きがちになるけれども、アコースティックピアノの大音響による騒音は無論のこと、電子ピアノでは床に伝わるカタカタ音が意外に大きい騒音になる場合もあるから、住居によっては床の防音に加えて床の防振施工も考える必要があるかもしれない。 ピアノの重量を考慮しての床補強については、業者の間でも賛否が分かれるようだが、風呂場の浴槽や熱帯魚の水槽を置くレベルの床補強まで頑丈にする必要は無いのかもしれないし、自分の納得がいくまで調べる必要があるだろう。 「ピアノよりも冷蔵庫や食器棚や本棚のほうが単位面積当たりの床にかかる負担が重い」と言う業者もいるし。 ピアノメーカーが販売する防音練習ボックス(重量がある)を部屋に入れる場合やピアノを複数台置く場合などは床補強が必要かどうか検討する必要があるかもしれない。 住宅の耐震基準が厳しくなる前に建てられた物件は、床の強度の規準が今の新築物件と違うだろうから、調べる必要があるだろう。 いずれにしても、ピアノを買う本人の自己責任でじゅうぶんに検討し納得した上で決断することになるだろう。
いちばん情けない状態は、憧れのピアノを買って、自宅に搬入できたはいいものの、防音や防振対策が手薄だったために、家の中や近隣への騒音問題が生じて、思うようにピアノが弾けなくなってしまう状態だ。 これでは、せっかく買ったピアノの「持ち腐れ」になってしまう。 つまり、ピアノの稼働率が下がり、ピアノを置いた場所の稼働率も下がるから、その分だけ、住宅全体の稼働率が下がってしまうのだ。
実は、ピアノに限らず、あらゆる楽器演奏や、発声や運動を伴う芸事には、騒音と防振の対策が不可欠だ。 大型楽器のピアノには搬入の問題も出てくるが、搬入の問題の少ないドラムの騒音は、ピアノの騒音を上回るといわれているし、ホーン類など金管楽器の騒音も大きいだろう。 三味線やアコースティックギターだってそれなりに音が外へ漏れるし、ヴォーカルや義太夫節だって、近隣に音漏れした状態で毎日長時間歌ったり唸ったりし続ければ、近所迷惑になるだろう。 だから、ピアノや楽器に限らず、あらゆるパフォーミング系の芸事を自宅で楽しみたいなら、部屋全体に防音・防振施工をするか、芸事部屋を、四方を他の部屋や廊下にとり囲まれた家の中心部に設計して家の外に音が漏れにくいようにするか、絶海の孤島に住むか、近隣も騒々しい繁華街や幹線道路沿いなどに住むなど、何らかの対策が必要だろう。
「そう言うのは簡単だけど、そんなおカネはないよ!」というのが私を含めた庶民の声だが、後付けの防音・防振対策は、結局その効果は中途半端になりがちだろうし、後付けでいろいろ買い足して置くもんだから、せっかくのピアノまわりが雑然として美観がショボくなるし、後付けの出費もチリツモ(塵も積もれば...)になるとバカにならない。 グランドピアノを搬入した後で「ピアノの下に防音防振ステージを設置する」場合は、ピアノの移動を伴うから、大事(おおごと)になってしまうし、せっかくのフローリング床も防音防振ステージの下に隠れて見えなくなってしまうし、だいいちその防音防振ステージが何十万円もして、しかもその重量が何十キログラムもするわけで、だったら最初から床補強+防音防振施工をしておいたほうがよかったんじゃないの?になりかねない。 また、ピアノの脚の車輪に耐震インシュレーターを履かせると、ピアノ自体が床からかなり浮いてしまい、ペダルを踏みづらくなるので、後付けでペダルの下に薄い台を置いたのだが、そうすると椅子との兼ね合いが悪いので、椅子の下にも同じような台を置いたのだが、そうすると、演奏中に椅子をズラしたくなってもズラせなかったり、左足の置き場に困ったり...と、どんどん物事がややこしい方向に行ってしまって、だったらやっぱり最初から床に防音防振施工をしておいたほうがよかったんじゃないの?になりかねない。 であれば、最初から防音・防振施工をバッチリ施した部屋を用意してからピアノを購入+搬入したほうが、後追い状態で防音・防振の対策をあれこれ調べて悩む労力や精神パワーや五月雨式の出費を防げるし、ピアノまわりもスッキリするから、気分良く演奏を楽しめるだろう。 それに、
あらかじめ、防音・防振の部屋を作っておけば、ピアノ以外の楽器に興味が移った時にも対応できるし、オーディオルームにもなる。 私が人生でもう一度チャンスがあったら、24時間いつでも気兼ねなく弾ける防音・防振施工をした部屋と、自分が思い描くピアノよりも大型のピアノであっても十分に搬入できる搬入ルートと部屋を、家の設計段階で確保しておきたいと思う。 というのは、家を建てた後に何年かしたら、家計の事情が良くなって、当初思っていたよりも大型のピアノに手が届く可能性が出てくるからだ。 「ピアノを弾こうなんて考えもしなかった」り「私ふぜいは小型のアップライトピアノで十分」と思っていた人が、人生の後半になってホッと一息ついたときに、「買えるおカネもじゅうぶんあるし、せっかくだから大きいピアノを!」と思うようになるかもしれないからだ。 もしそうなったときに、搬入ルートが狭すぎてピアノが入れられなくて地団太(じだんだ)踏んで悔しがっても、後の祭りだ。 家を部分的にでも壊すことは大変な出費だし、家へのダメージも少なからずあるだろう。 かといって、ピアノのためにもう一度家を新築できるような人だったら、最初からフルコンのグランドピアノをスイスイ搬入できるような大豪邸を建てているだろう。 我々一般庶民は、そうではない。 後々の追加コストを最小化すべく、できるだけ一発必勝を狙うしかない。 だから、なにはなくとも、まず第一に、できるだけ余裕を持ったピアノ搬入ルートと、適切な防音防振性を備えた部屋をあらかじめ用意してから、まず手始めに、コストを抑えた中古のアコースティックピアノや電子ピアノを置いて、とりあえずピアノライフをスタートさせる ➡ その後、家計に余裕ができたら、自分の身の丈の範囲内で望み得る最も良いピアノに買い替える、という順番にすれば、物事がスムーズに運びやすい。 ピアノ以外の楽器、たとえばドラムやエレキギターに興味が移った場合も、あらかじめドラムやPAの騒音にも対応できる水準の防音防振施工をしておけば、スムーズに移行できる。 家族がヴォーカルや義太夫をたしなみたくなった時も、ピアノのために作った防音防振ルームで対応できるし、その部屋をオーディオ鑑賞ルームに転用することも可能だろう。 たまにムシャクシャしてシャウトしたいときや、犬も喰わない夫婦喧嘩の口論や、フレイル予防にTRF監修のEZ do danceダンスエクササイズをやろうと一念発起した場合も、防音防振ルームがあれば、隣近所に気兼ねなく、思う存分できる。 防音防振ルームは、初期投資はハードルこそ高いけど、いったん作ってしまえば、のちのち様々な用途に使えるから、部屋の稼働率が高どまるので、長期的に見ればお得な投資といえるのではなかろうか。 それから、齢をとってくると、指の故障などの体調不良によって、ピアノを長時間弾きたくても弾けなくなることが起こり得るから、防音防振ルームをピアノ以外の目的でも使うことを、あらかじめ視野に入れておくといいかもしれない(←これについては、この記事で書いた:ピアノを買う前に(私が個人的に)押さえておきたかったポイント(その③) - ピアノ方丈記)
「防音耐震ルーム?もちろん欲しいけど、そんなおカネは無いよ!」と思った場合は、前回の記事①にもどって本多静六氏直伝の「買ったつもり貯金」でケチケチ節約アンド貯金生活を粛々と実行するのみ!である。 だっておカネがないんだもん、一生懸命働いておカネを貯めるしかないよ。 宝くじ?買ったことあるけど当たったためしが無いし、若い頃に「空からおカネが降ってこないかなぁ...」て思って空を見上げておカネが降ってきた試しは一度だってなかったよ。 自分が打ち出の小槌になってセコセコセコセコ働いてチマチマチマチマおカネを貯めるのが、いちばん確実な方法だ。
(3)水回り:
ピアノを弾く前に手を洗った方がいいから?と思うかもしれないが、それもそうだが、何よりも湿度管理のためだ。 ピアノを置く部屋を適切な湿度に保つための加湿器・除湿器の給水・排水ができる水回り設備が、部屋の近くにあった方が、給排水の手間の煩わしさが軽減される。 これはかなり重要なポイントだと、私は思う。 ピアノ以外の小型の木製・皮革製楽器についても、ピアノ以上の細やかな湿度管理が必要だろう。 アコースティックピアノや、アコピと同じ木製ケンバン・アクションを搭載する電子ピアノを検討する場合は、事前にピアノの湿度管理についてリサーチして知識を蓄えておくと、買ったばかりのピアノが数年でミイラ化したりカビが生えたりするリスクを抑えられる。 湿度管理を事前にリサーチすることによって、数千円程度の湿度計は個体ごとに表示の大きなバラつきがあることや、楽器を置く部屋の大きさや、その家の建築工法や、冷暖房システムや、いつごろ建てられたかどうかなどによって、湿度管理は千差万別であることを、事前に認識しておく。 そして、少なくともピアノを購入して家に搬入する1年前から、ピアノを入れる部屋について四季を通じた湿度変化を実地に調査し、加湿器や除湿器を設置して部屋の年間の湿度管理のリハーサルをしておくと、ピアノ搬入後の自分の精神的なストレスが大きく低減されると、私は思った。
(4)冷暖房システム:
(3)の湿度管理のためには、部屋の冷暖房システムにも配慮が必要だ。 大型楽器のピアノは、一度設置した後は、めったに部屋の中で場所を動かさないから、冷暖房の吹き出し口や床暖房の場所を避けて配置する必要がある。
(5)部屋の大きさ:
一般家庭のピアノ練習室は、大きくても12畳ぐらいじゃないかと思うが(富裕層の住宅については想像がつきません)、ピアノ専用ルームがあれば、一人で部屋に籠って集中できる反面、部屋が狭すぎると、せっかく買ったピアノのポテンシャルをフルに楽しむことができない、という、「あちらを立てればこちらが立たず」のトレードオフが存在する。 天井高が3.5メートル以上ある30畳の練習室でも持たない限り、一般家庭のピアノ練習部屋に大型グランドピアノを入れることは、渋滞の道路でフェラーリを時速10キロでノロノロ運転させるのと同じことになる(「部屋に音響施工をすることによって音質がある程度改善される」という動画もある)。
一般の家庭でピアノを大きい部屋に置きたい場合は、リビングルームやLDやLDKになるだろう。 吹き抜け空間があるリビングルームに置くと、良い音が楽しめるのではないかと思う。 だが、ネックは、リビングルームは、集中して練習したり楽譜や鉛筆やなにやかやを投げ散らかしたままでいられる環境ではないということだ。 それに、家族の誰かが横で大画面テレビを見たい場合は、部屋の取り合いをしなければならない。 つまり、家族が集うリビングでは、著名な音大のピアノ演奏科の受験を目指すような練習は望めないということだ。 それから、食事をする場所と一体化したLD(リビングダイニング)にピアノを置く場合、ダイニングテーブルでホットプレートを使った焼き肉や餃子パーティーなどは、絶対に避けるべきだろう。 いわんや、キッチンまで一体化してしまったLDK(LD+キッチン)に置く場合は、テーブルで焼き肉・餃子パーティーはもちろんのこと、キッチンでの揚げ物や炒め物料理にも気をつけたほうがよいかもしれない、と、個人的な体験から、私は思っている。 数年前に、とあるライブハウスのピアノ会に参加したとき、自分の順番がきてピアノに座って鍵盤にさわったとたん、指がヌルっとすべった! 鍵盤が、油膜がはったようにヌルヌルして、ピアノ自体もやけにテカテカしている。 厨房で料理を作る際にフライパンで熱せられた油の微粒子が空気内に拡散してピアノ全体に付着したんだ!と私はとっさに思った。 このライブハウスは、「オープンキッチン」といえば聞こえはいいが、実のところ、ガランとした部屋にステージも客席も厨房もいっしょくたに置いただけの作りで、しかもライブハウスのオーナーのおじさんが料理も配膳もすべてこなすという、はっきりいって料理と配膳と皿洗いと会計の切り盛りにイッパイイッパイで、ピアノを拭くところまで手が回っていない様子だった。 料理も、お酒が進む(=利益率の高いドリンク類がよく売れるような)油っこいスパゲティや炒め物がメイン。 築年数がかなり経ったビルだから、むき出しの厨房の上部に有るであろう換気扇が昔ながらのプロペラ式で排気力が弱いのか、換気扇の掃除まで手が回らずに排気がつまってしまっていたのかもしれない(ライブハウスは基本飲食店なので、保健所の認可を受けて営業しているはずだから、換気扇の設置はされているだろう)。 ピアノのある部屋で油っこい料理をすると、ピアノも油ぎってくる!ということを私は知った。
結論:
「ピアノとは【部屋(不動産)+ピアノ】の一体型設備である!」 という視点でピアノを考えると、ピアノ購入にまつわる失敗が少なくなる、と私は思った。
「ピアノはコンサートホールのパイプオルガンと同じ!」と思えばよいのだ。 ピアノを含めた楽器の減価償却の耐用年数は(変更されていなければ)7年だと思うが、パイプオルガンだけが耐用年数が40年以上なのは、パイプオルガンの入れ物である鉄筋コンクリート造りのコンサートホールや教会、つまり不動産の耐用年数が適用されるからだ。 コンサートホールや教会に据え付けられたパイプオルガンは、動かすことができない(不動だ)から、不動産の一部と考えられるのは当然のことだ。 ピアノの場合も、ある意味「ピアノもパイプオルガンと同じ、部屋(不動産)の設備の一部なんだ!」と最初から思っておけばよいのではなかろうか。 これはピアノに限らない:ドラムをはじめ、金管楽器、人間の声、ダンスといった、あらゆるパフォーミング芸術は、防音・防振設備の部屋(不動産)があってこそ、心おきなく従事することができる。 音を発しない油絵や書道だって、油絵具や墨が飛び散っても構わない専用部屋(不動産)の中で、部屋の汚れを気にすることなく、思う存分に自己表現できるのが理想だし、彫刻や造形だって、トンカチしたり溶接作業を気兼ねなくできる工房(不動産)が欲しい。 茶道に至っては、茶室(不動産)が必要だからおカネがいちばんかかりそうだ。 俳句や和歌は屋外でも作れるが、小説ともなると、執筆に集中できる書斎スペース(不動産)が欲しくなるだろう。 つまり、あらゆる芸術は、その芸術活動を可能にする設備が整った部屋(不動産)を確保してはじめて、心おきなく行うことができるのだ。
それなのに、私を含めてほどんどの人は、楽器の購入から入ってしまう。 だから、うまくいかないのだ! まずは、希望する芸術活動を可能にする設備が整った部屋の確保、すなわち「不動産」からスタートすればよいのだ。 最初の段階で、望みの大きさの楽器が余裕で搬入できて、しかも防音防振対策がバッチリの「不動産」の確保を実現しておけば、移動可能な「動産」である楽器の購入は、その後からでもぜんぜん構わないのだ。 楽器の入手から始めてしまうから、搬入できなかった、近所から騒音の苦情を言われた、大家さんから「ピアノはダメ!」と言われてしまった...となってしまって、ストレスと欲求不満がたまるばかりで、まったくうまくいかない、というか、そのままの状態だったら、ピアノを諦めない限り、未来永劫うまくいくはずがない。 クルマ(動産)を購入するためには必ず駐車場(不動産)の確保から入らなければならないのと、まったく同じに考えればよいのだ(かつで、どこかのピアノ愛好家さんが「ピアノを買うのはクルマを買うのと似ている」と書いておられる記事を見たことがあるが、まったくもってその通りだ)。 楽器(動産)の購入も、適切な設備が整った部屋(不動産)の確保からスタートすれば、購入後の様々なストレスを避けることができる。 つまり、誰に気兼ねなく楽器演奏を楽しめる、事実上の防音・防振完備の音楽スタジオ(不動産)を自宅に用意することから始めれば、「初め良ければすべて良し!」の好循環サイクルで物事が動き出すから、心おきなくピアノを弾けて、ストレスも無くて心は天国!になるのだ。
実のところ、芸術活動にいそしめる期間とは、それを行うための道具(楽器)と適切な設備が整った場所(不動産)を確保できている期間のことだ。 パイプオルガン演奏の寿命は、パイプオルガンが入っているコンサートホール(不動産)の寿命だ。 ピアノでもドラムでも、パイプオルガンと同じように考えればよいのだ。 だから、活動場所(不動産)を確保できなくなった時、その人の芸術活動も終了する。 よく、「久しぶりに実家に帰って、実家にあるアコースティックグランドピアノを弾いてきました」なんて言う人いますね。 今住んでいる家(不動産)にグランドピアノを置くことができず、そのうえ、日々の生活でグランドピアノを滅多に弾く機会が無くなってしまったのであれば、その人のグランドピアノによる芸術活動の日常は、既に強制終了している。 それから「結婚したので、実家にある自分のグランドピアノを新居に持っていきたいけれど、主人やお姑さんに反対されて...」なんて悩む人がいますが、そもそも悩むことではありませんよ。 グランドピアノが置ける新居(不動産)を、自分(の親)が用意すればいいだけのことです。 どうしてそれができないかって、自分(の親)におカネが無いからでしょ? おカネが無ければ、ハイそれでおしまい。 だから、おカネが無くて自分の欲望を実現できないのに悩むこと自体が、不毛で無意味です。 その人が熱中していたその活動は、それを経済的に維持することができなくなった時点で、強制終了します。 悩む問題じゃない。 単なる経済力(カネ)の問題です。
反対に、「子供の頃に買ってもらえなかったグランドピアノを、家の購入を機に買う決断をして、家の設計段階から練りに練って計画して作った専用の防音ピアノ室に念願のピアノを入れて、昼でも夜でも好きな時間に毎日弾いて楽しんでいます!」と言う人は、設備が整った場所(不動産)とグランドピアノを獲得した時点から、その人のグランドピアノによる芸術活動がスタートして、今もその人は自分が望んだ芸術活動に従事しているということです。 もちろん、今現在、芸術活動を楽しんでいる人も、必要な場所(不動産)を維持できなくなって、アコースティックピアノなら調律料金を払えなくなった時点で、その人のアコピによる芸術活動は強制終了します。 おカネが尽きた時が、終了する時です。 おカネの有る無しは、まさしく、「無常」の元(もと)です。 そして、おカネが尽きてしまったら? ➡ 前回・前々回の記事で書いた、本多静六翁が断行された、決死の「糞(クソ)勉強」で高学歴を目指す➡なるべく給料が高い定職に就いて脇目もふらずにガムシャラに働いて、「買ったつもり貯金」や「月給の4分の1とボーナス全額を強制貯金!」など本多静六翁直伝の厳しくもパワフルな蓄財メソッドを駆使した、なりふり構わぬ怒涛の労働+ドケチ節約貯金生活!に突入です。
とはいえ、人の一生の間で、怒涛の労働+ドケチ節約貯金生活でおカネを貯められる期間は、ふつうは、その人が働き盛りの年代だけです。 それに、齢をとってから調子に乗って趣味道楽にうつつをぬかして散財しすぎると、齢とともに医療費など生命維持コストが年々増えていくので、人生の最晩年になってから、とんでもなく手痛いしっぺ返しが来るかもしれません。 この世も、人生も、まさに「無常」。 私も、「ようやく人生ホッとしてきた~♪」なんてピアノ道楽にハマり過ぎてウッカリ最晩年に人生が転落することがないように、本多静六さんと奥さんを見習って、ますます気を引き締めて粛々と、手堅く地道に生きていこうと思いました。
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